福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「一匹と九十九匹と」…政治と文学の関係を問うた福田恆存
福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福(4)福田恆存とは誰か?
浜崎洋介(文芸批評家/ 京都大学経営管理大学院特定准教授)
福田恆存とはいったい誰なのか。消費社会化した日本の「大衆化」の問題を指摘し、また大きな業績の1つとして『シェイクスピア全集』を全て翻訳した福田恆存の思想に迫る前段として、彼の生涯、その人物像を確認しておきたい。下町で育った福田恆存の身体感覚が、政治では救えない「一匹」を巡る人間論に至るまでを解説する。(全8話中第4話)
時間:17分38秒
収録日:2024年5月10日
追加日:2024年7月7日
≪全文≫

●「孤独をどう乗り越えるか」が福田恆存の思想の原点


 では、続きをやっていきましょう。前回は、大衆化の問題を見た上で、それがいかに人間をダメにするのか、あるいは、自分たちの自然観とかリアリティをなくしていくのか、あるいは、価値観をなくしていくのかということを見ました。それに抵抗していく人間として、福田恆存をご紹介しました。

 では、福田恆存とはいったい誰かという話にもおそらくなると思いますので、まず今回は、「福田恆存とは誰か?」と題して、その人生の主調低音を皆さんと一緒に確認しておきたいと思います。福田恆存に入る前の前段、準備体操という感じです。

 私は福田恆存をイメージするときに、いつも1つの文章を思い出すのです。それが『全集』の「覚書Ⅰ」の中で書かれている、1つのイメージなのです。それを先にご紹介した上で、人生について少し見ておきたいと思います。

 まずは読んでおきましょうか。彼が晩年、全集を編むときに書いた言葉です。振り返りながら。

 〈大学に入ると、本郷界隈に田舎から攻めのぼって来た人種が、下宿に屯して、一つの世界を形造つてゐたが、私の家は神田錦町である、下宿の必要もなければ、反対に私を訪ねてくれる者も殆どゐない。後年さういふ連中の生き方を「下宿文学」と名付けて、密かに私は自分の「孤独」に栄冠を与へた。それは負け惜みでも何でもない。その頃の私は用のないおしゃべりが苦手で、むしろ孤りを好んだ。私は気質的には良くも悪くも職人であり、下町人種であつたのだ。だが、一方では、あたりを取巻く「知識人階級」といふ異人種の包囲網に遭ひ、さうかといつて身方の下町人種は大震災以後、(つまりこれは、関東大震災以後)もはや周囲になく、どつちへ転んでも孤独であつたのだ。〉

 ここなのです。この孤独さは、まさにいま、私たちが持っている孤独さともどこかしら通じるのではないかと思います。

 今言った「下宿文学」とは何かというと、つまり、本郷界隈に田舎から攻めのぼってきた人種ですから、知識人といっていいでしょう。知識人というのは、身体ではなく頭だということにもなりますし、故郷を捨てていくということにもなりますし、同時に、頭であるがゆえに、その頭によって自然を変えようとします。であるがゆえに、個人主義と自由を重んじるといった、そ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
デカルトの存在論に学ぶ(1) 「我思う、ゆえに我在り」
「我思う、ゆえに我在り」はデカルトの専売特許ではない
津崎良典
『孫子』を読む :計篇(1)「戦わずして勝つ」の意味
「戦わずして勝つ」ことを唱える『孫子』が注目される理由
田口佳史
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明

人気の講義ランキングTOP10
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(3)国司と郡司のつきあい
郡司の妻たちと宴会!?……国司・大原真人今城へのはなむけの歌に記された「媚態表現」の真相と人心掌握術
上野誠
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(6)認知症予防と健康寿命の延伸に向けて
フレイル・サイクルは回り出したら抜けられない!?負のスパイラルへの対処法
小川純人
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(1)会ってみたプーチン…その実像
ロシア人の見る「ロシアの歴史」を知るとロシアがよくわかる・・・実際に会ってみたプーチンの印象とは?
上月豊久
戦国武将の経済学(3)豊臣秀吉の経済政策
豊臣秀吉の驚愕の国内貿易…莫大な財力を生んだ経済政策
小和田哲男
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男