福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福
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福田恆存の思想の根幹にあるロレンスの『黙示録論』とは
福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福(5)ロレンス『黙示録論』と人を愛する道
浜崎洋介(文芸批評家/ 京都大学経営管理大学院特定准教授)
戦時下にあってロレンスの『黙示録論』を翻訳し、戦後にはその出版にこぎつけた福田恆存は、同書から思想的に大きな影響を受けていた。近代化によって個人主義と全体主義の板挟みとなった人間は、どのようにして他者との愛を育む契機を取り戻せるのか。そこでロレンスは「自然との一体化」の必要性を説く。(全8話中第5話)
時間:13分22秒
収録日:2024年5月10日
追加日:2024年7月14日
≪全文≫

●福田に多大な影響を与えたロレンスの『黙示録論』


 では、続きのほうに入っていきましょう。前回、福田恆存とはいったい誰かという形で、福田恆存の全体像を皆さんと一緒に確認したかと思います。今回は、まさに福田恆存の思想の根幹にあると前回申し上げた、D・H・ロレンスの『黙示録論』の内容を、皆さんと一緒にまずは確認しておきたいと思います。

 これが今回の「自然」といった言葉の根底にある思想だと言ってもいいかもしれません。先に結論をいっておきましょう。D・H・ロレンスは、有機体としての宇宙、つまり自然なことなのですが、その有機体としての宇宙ということを基礎に置きながら、彼自身の文学的な思想を立ち上げていったといっていいかと思います。

 D・H・ロレンスが最晩年に書いたといわれている『黙示録論』なのですが、これ自体はドストエフスキーやニーチェ、フロイトやベルクソンといった、19世紀末から20世紀にかけての思想家から圧倒的な影響を受けていて、その最先端で書かれていたものだったのです。それを、まさに同時代的に福田恆存は読んでいたということになります。

 福田の言葉も読んでおきましょう。彼はロレンスについてこう言っています。

 〈これ、(つまり、D・H・ロレンスの『黙示録論』)は、「ロレンスが死の直前に書いたもので、かれの思想のもっとも凝縮された証言である。すくなくとも、ぼくはこの一書によって、世界を、歴史を、人間を見る見かたを変えさせられた。」、「私はこの書によって眼を開かれ、本質的な物の考え方を教わり、それからやっと一人歩きが出来る様になったのである」、「私に思想というものがあるならば、それはこの本によって形造られたと言ってよかろう」〉

 重要なのは、これを昭和26年、昭和40年、昭和57年にいっていることです。つまり、それぐらいの間隔を空けてでも、彼はロレンスについて、決定的に私をつくったというふうにいっているわけです。それほど重要な本だったということになります。


●ロレンスが批判したキリスト教の2つの側面


 では、いったいその本は何を書いているのかということです。まさに『黙示録論』と書かれているので、黙示録が関係しているということが分かると思いますが、つまり、キリスト教の問題をロレンスはそこで問うているのです。

 簡単に...

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