福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
福田恆存の思想の根幹にあるロレンスの『黙示録論』とは
福田恆存とオルテガ、ロレンス~現代と幸福(5)ロレンス『黙示録論』と人を愛する道
浜崎洋介(文芸批評家/ 京都大学経営管理大学院特定准教授)
戦時下にあってロレンスの『黙示録論』を翻訳し、戦後にはその出版にこぎつけた福田恆存は、同書から思想的に大きな影響を受けていた。近代化によって個人主義と全体主義の板挟みとなった人間は、どのようにして他者との愛を育む契機を取り戻せるのか。そこでロレンスは「自然との一体化」の必要性を説く。(全8話中第5話)
時間:13分22秒
収録日:2024年5月10日
追加日:2024年7月14日
≪全文≫

●福田に多大な影響を与えたロレンスの『黙示録論』


 では、続きのほうに入っていきましょう。前回、福田恆存とはいったい誰かという形で、福田恆存の全体像を皆さんと一緒に確認したかと思います。今回は、まさに福田恆存の思想の根幹にあると前回申し上げた、D・H・ロレンスの『黙示録論』の内容を、皆さんと一緒にまずは確認しておきたいと思います。

 これが今回の「自然」といった言葉の根底にある思想だと言ってもいいかもしれません。先に結論をいっておきましょう。D・H・ロレンスは、有機体としての宇宙、つまり自然なことなのですが、その有機体としての宇宙ということを基礎に置きながら、彼自身の文学的な思想を立ち上げていったといっていいかと思います。

 D・H・ロレンスが最晩年に書いたといわれている『黙示録論』なのですが、これ自体はドストエフスキーやニーチェ、フロイトやベルクソンといった、19世紀末から20世紀にかけての思想家から圧倒的な影響を受けていて、その最先端で書かれていたものだったのです。それを、まさに同時代的に福田恆存は読んでいたということになります。

 福田の言葉も読んでおきましょう。彼はロレンスについてこう言っています。

 〈これ、(つまり、D・H・ロレンスの『黙示録論』)は、「ロレンスが死の直前に書いたもので、かれの思想のもっとも凝縮された証言である。すくなくとも、ぼくはこの一書によって、世界を、歴史を、人間を見る見かたを変えさせられた。」、「私はこの書によって眼を開かれ、本質的な物の考え方を教わり、それからやっと一人歩きが出来る様になったのである」、「私に思想というものがあるならば、それはこの本によって形造られたと言ってよかろう」〉

 重要なのは、これを昭和26年、昭和40年、昭和57年にいっていることです。つまり、それぐらいの間隔を空けてでも、彼はロレンスについて、決定的に私をつくったというふうにいっているわけです。それほど重要な本だったということになります。


●ロレンスが批判したキリスト教の2つの側面


 では、いったいその本は何を書いているのかということです。まさに『黙示録論』と書かれているので、黙示録が関係しているということが分かると思いますが、つまり、キリスト教の問題をロレンスはそこで問うているのです。

 簡単に...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
津崎良典
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎