独立と在野を支える中間団体
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
契機はリスボン大地震…ルソーが中間団体を考えなかった訳
独立と在野を支える中間団体(2)中間団体なきルソーの「社会契約論」
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
中間団体について深く考える上でルソーの『社会契約論』は基本的な議論の1つといえる。『社会契約論』では、個人が契約して国家を形成し、そこで形成された一般意志に皆が従い、犠牲を払うというものだが、そこには中間団体というものが全く考えられていなかった。なぜか。そうしたルソーの思想の契機となったのが、1755年にポルトガルの首都リスボンで起こった大地震である。(2024年6月8日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全8話中第2話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分44秒
収録日:2024年6月8日
追加日:2024年10月25日
≪全文≫

●『社会契約論』で知るルソーが考えた社会の仕組み


―― その中間集団が、まさに今日の副題ではないですが、自由である、独立であるなど在野を個人が実現することを考えた場合に、非常に重要なものになるわけです。

片山 そうですね。あまりこういった極端な例を出さなくてもよかったのかもしれませんが、話の接ぎ穂としてジャン=ジャック・ルソーの話を出そうかなと思います。

 ルソーの『社会契約論』は、おそらく中学校などの社会科的なものでも登場するかなとも思うのですが、非常に簡略化して申します。

 個人というものがいる。自由な、一人ひとりが勝手な、あるいは孤独な個人というものが世の中にはいて、これが基本である。

 でも個人だけでは、うまく生きていけない。いろいろなことがあるから、契約して国家というものをつくる。権力というものをつくる。その国家権力というものは、(ルソーが行っているのは民主主義的な議論なので)誰か王様を立てて全部任せてしまって言うことを聞く、ボスに任せて言うことを聞くのではなく、「皆の意志」で権力(とりあえず「政府」という言い方をしてもいい)をつくって運営される。

 そうすると、いろいろな意見があるから一枚岩にはどうしてもならないけれど、それでも皆が合意できる一般意志、あるいは「お前が合意できなくても皆がこうなのだから、お前もついて来い」という形で意志がつくられる。それによって、例えば戦争などで、それを構成する個人が死ななくてはいけないこともある。でも、そういったことを受け入れる形でないと、国家は成り立たない。それを契約してつくる。契約してつくったら、その契約に皆が従う。

 「契約したけれど他の人と意見が合わなすぎる。少数派の私の意志を貫徹させてください」と言っても、それが水と油だったら無理なのだから、とりあえず最大多数が納得して“全体の意志”というものができたら、それに従いなさい。場合によっては、それで戦争をするなどいろいろなことがあって、お前も死ななくてはいけない。それを認めることが契約なのだ――。

 これがジャン=ジャック・ルソーの議論です。現代の民主主義を考える上での一つのベーシックな考え方です。近代の西洋の社会、その延長線上に今の日本もある中で、非常に有力なものの考え方です。

 つまり国家とい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一