日本人が知らないアメリカ政治のしくみ
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
定年のないアメリカの最高裁判事、大統領が選ぶ時に大論争
第2話へ進む
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
アメリカ政治には、日本人から見ると不明な点が多い。大統領の権限はほぼ拒否権だけに限られていて、予算編成の力も立法権もない。立法の要は議会だが、ねじれ国会や分裂政府に悩み、最近では妥協案をつくる柔軟性に欠けてきた。三権が互いに「チェック&チェック」しているのが実態のようだ。(全5話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分33秒
収録日:2020年8月27日
追加日:2020年9月30日
≪全文≫

●アメリカ大統領には権限がない


―― 皆さま、こんにちは。本日は曽根泰教先生に、アメリカ政治の政策決定過程について教えていただく講義を、これからお聞きしたいと思います。先生、どうぞよろしくお願いいたします。

 2020年11月に大統領選挙もございまして、ちょうど今アメリカ政治に対する関心も高まっているかと思います。ただ、日本人は、アメリカ政治が具体的な政策決定としてどう動いていくかということを、案外知らないとも思っておりまして、ぜひそこをお聞きできればと思います。

 まずは、大統領です。大統領という存在について、日本人の中には大統領の力は強くて、何でもできるのではないかと思っているような人もいると思います。実際のところはどうなのでしょうか。

曽根 一般イメージと違って、アメリカ大統領には権限がないということを、まず押さえないといけないです。

―― 権限がないのですね。

曽根 権限がない。教科書的な説明でいくと、われわれはよく「三権分立」といいますね。三権分立によるチェック&バランスという言葉も聞いていると思います。それでいうと、大統領には立法権も予算編成権もないのです。

―― 立法権もなければ、予算もつくれないということですね。


●大統領の巨大な権限は「ノーと言う」拒否権


曽根 では何をするかというと、議会に対して教書を送って、「こういうことをやりたいです。それに従って立法してください」ということで、そちらまかせの話になってしまうわけです。

―― 教書というのは、日本のイメージでいうとどういうものに近いのですか。

曽根 施政方針です。

―― なるほど、なるほど。

曽根 ただ、大統領が手足をもがれたように権限がないにもかかわらず、実際には政治を動かしている。それがどういう方法なのかというのは、実は一番重要な部分です。それは教科書的にいう「三権分立でチェック&バランス」というよりも、「チェック、チェック、チェック」です。

 連邦制のアメリカでは州の力もありますから、州がチェックする場合もありますし、最高裁はもちろんチェックする。そのため、アメリカ政治において大規模改革はなかなか実行できないと言われてきました。

 一方で、大統領には拒否権があります。上下両院で通した法案を大統領が拒否するのですから、巨大な権限であるのに間違いありませんが、何かを実...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司