●「院内総務」と「小委員会」は日本の何に当たるのか
―― 議会について一つご質問したいのは、党議拘束がないという点です。また、前回のお話では5000本も法案が出るということでしたが、以前テンミニッツTVの講義で、日本の国会には国会対策委員会があり、法案を通す・通さないについて独特の動きをしているとうかがいました。アメリカの場合、そのあたりはどういうことになるのですか。
曽根 よく「院内総務」(「院内幹事」ともいう)と訳される"Whip"という存在がおり、「投票させるために鞭を打つ」というような役割を担います。いざ法案を通したいというときには、こういう人たちが議場に行って、「賛成してくれ」ということを行うわけです。
国会対策に関する部分、日本でいう「議院運営委員会(議運)」の役割は院内総務(Whip)が担います。しかし、実際、本当に通したいときに、党の幹部は実質的にどうやって人びとを動かすのか。実はこの点が重要なのですが、それほどよく分からないということです。
―― なるほど。そのあたりがまた、日本とはちょっと感覚が違うところですね。
曽根 そうですね。特に党議拘束がある日本のような場合には、自民党の総務会で決まると、自民党議員はそれに反することはできないわけです。ところが、アメリカは党議拘束がありません。では、自民党の「部会」に相当する議論はどこでやっているのか。アメリカでいうと議会の「小委員会」が、たぶんそれに相当すると思います。
そういう意味でいうと、日本の知識というか、日本で獲得された過去の経験則をもってアメリカを見ると、アメリカの議会が違うように見えるということです。
―― そうですね。むしろ日本におけるパーツが、アメリカではどこに当たるかという点が、見ていかなければいけないところですね。
曽根 そういうことです。
●アメリカ最高裁の強い権限、長い任期と独立判断
―― 続いて、今度は最高裁判所(最高裁)のほうを見ていきたいのですが、アメリカの最高裁というのはどういう位置づけでございましょうか。
曽根 アメリカの最高裁は9名の判事から構成され、三権の中でも強い権限を持っています。大統領が相手でも、議会が法案を通して通過したものでも、違憲立法審査によって憲法違反の判断ができるからです。第1回で、大統領には拒否権があると言いましたが、最高裁にも「違憲立法」を申し立てる拒否権があるわけです。
判事については大統領が指名して任命するわけですが、われわれにすると「定年がないのか」といいたくなる不思議な終身制を取っています。つまり、基本的には政治任命です。
だから、オバマ時代に選ばれた人とトランプ時代に選ばれる判事とは当然違いますが、入れ替わりの任命を待つには、前の人が亡くなるまで待たなければなりません。それだけ身分保障が非常に強く、全部入れ替えるには、例えばその人たちが高齢者になって亡くなり、次の世代が入ってくるのを待つしかありません。
大統領が判事を選ぶときにも、アメリカでは大論争が起こります。オバマ時代には、選ぼうとしたけれどストップがかかり、大統領選挙の後、政権が替わってからトランプ氏がニール・ゴーサッチ氏を選びました。判事を選ぶこと自体が、政治論争になるわけです。(注 収録後、ルース・ギンズバーグ判事が死亡したために、次の判事を、大統領選挙前にしたいトランプ氏とそれに反対する民主党との対立が表面化した)
―― そうですね。そうなると、多少不謹慎な話ですが、どの政権のときに何人お亡くなりになったかというのは、かなり大きなことになりますね。
曽根 はい。ところが、選ばれた判事たちが大統領側の党の言うことをそのまま通すかというと、そうでもないのです。
―― なるほど。
曽根 トランプ氏に選ばれた人でも、トランプ側に立たない判決をする場合があります。そういう意味では、今度は最高裁の判事たちの"voting(賛否)"をよく調べていかないといけません。そういう意味でいうと、判事たちがどういう判決を支持しているか(書いたか)というところは、また独立した研究対象です。
―― なるほど、ありがとうございます。
●各州の歴史的経緯と連邦制における州の主権
―― 次に連邦制についてうかがいます。
曽根 アメリカでは各州固有の歴史があり、マサチューセッツ州やバージニア州が植民地だったように、州が成り立ってきた歴史的経緯があるわけです。アメリカは連邦国家として憲法をつくりましたが、その憲法は最初の13州は各州の契約として出来上がりました。ですから、非常に強い州の権限がいまだに残っていて、州兵もいるわけです。さらに、州にも一部主権があります。
州に主権があるとはどういうことか。合衆国憲法や連邦法と州の憲法や法律が矛盾する場合に...