●現在進行形の問題提起を投げた『コロナの衝撃』
―― 皆さん、こんにちは。
小原 皆さん、こんにちは。小原です。よろしくお願いします。
―― 本日は、小原雅博先生に「米中関係の行方と日本」というテーマでお話をいただきたいと思います。小原先生、どうぞよろしくお願いいたします。
先生は、この5月に『コロナの衝撃』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)というご本を出版され、コロナが国際政治に与える影響について論じられました。ご反響はいかがでしたか?
小原 はい。5月に出版社から話があり、緊急出版という形で出しました。発生源についてはいろいろ議論がありますが、まさに当時、中国武漢から発生した感染症がパンデミックになって世界に広がっていく最中で、それが国際政治、特に米中の大国関係にどういう影響を与えるのかという視点からぜひ書いてほしいということでした。
私としては他のこともいろいろとありましたし、これは動いている問題ですから、どれだけ賞味期限を延ばせるのかという不安はありましたが、とにかく今起きていることの本質を自分なりに見極めながら書き上げたということがあります。
ここにもあるように、読売新聞と日経新聞が書評を書いてくれました。武漢で発生したものですから、私の中国ネットワークも使いながら、どういったプロセスで新型コロナウイルスが広がっていったか、それに対して中国当局がどう対応していったかというあたりにできる限り突っ込んだ形で分析していくのが一つの大きなテーマでした。そのあたりについて、書評で取り上げてくれました。
また今後、このコロナがどういった形で社会や政治経済を変えていくのかといった視点についても触れていただきました。まだまだ今も現在進行形の話であり、結論が出ているわけではないのですが、私はここに書いたような問題意識を持って、今もフォローしているところです。
●東大生が選んだキーセンテンスは「安全と自由の関係」
―― そして、これを大学の小原ゼミの皆さんがお読みになっているということですね。
小原 そうです。
―― キーセンテンスがここに出されていますね。
小原 たまたま春学期のゼミが始まったところで、コロナの問題だけではなく、とにかく幅広くいろいろな問題を取り上げて議論しています。中でも現在われわれが直面している最大の問題だということで、私の本をみんなに読んでいただき、印象に残ったセンテンスを選んでもらいました。そこからベスト5を選びましたが、ここに書いてあるのが一番票の多かったものになります。
読んでいただくと分かるように、一つはまさに「安全と自由の関係」、これは自由とはいったい何か、それは責任を伴うものなのだというところにつながります。そうしたジレンマのようなものが、この問題の本質にはあると思います。
それが厄介な問題だということが書いていますが、一つの問題を解決しようとすると、もう一つの問題が解決できなくなる。これはまた、「逆もまた真なり」で、このような状況に今まさに各国政府が置かれているわけです。そのあたりをみなさんに読み取っていただいたということです。
―― 「安全と自由」ということになると、例えば中国では感染を抑えるために、武漢の封鎖や監視網の強化など非常に強硬な手を使いました。そこから、感染を抑制するのか、それとも市民の自由を守るのか、というジレンマが出てくるということでしょうか。
小原 そうですね、ええ。これは大きなテーマですから、後でお話ししたいと思いますが、一言で言うと、まさに個人ひいては国民の安全を守るために、国民の自由や権利、プライバシーなどにどこまで踏み込んでいけるのか。
これは、特に日本やアメリカのような民主主義体制の国にとっては非常に大きな問題になるわけです。そこを実はあまり気にせずにうまくやったのが中国だということです。
安全と自由には人類の長い歴史があるわけで、そのあたりにも後で触れたいと思います。まさにおっしゃる通りです。
●著者が強調したかった米中の対比と国際協力の難しさ
―― 次が、小原先生ご自身が選んだベスト5ですね。
小原 私は、学生たちが選んだのとは少し違うところですが、書いた本人として強調したかった部分を選びました。もちろんほかにもたくさんありますが、「五つしか選んではいけない」ということなので、このようなところを選んだわけです。
まずは、今言った安全の話があります。それから、いわゆる中国の話。今回のコロナを通じて、中国の体制を中国自身がどのように評価し、世界はそれをどう評価するのかというこ...
(小原雅博著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)