「G7広島サミット」をどう読むか
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なぜG7広島サミットは歴史的意味が非常に大きくなったか
「G7広島サミット」をどう読むか(1)その歴史的意義
政治と経済
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
2023年5月19日から21日まで開催された、G7広島サミット。このサミットには、どのような歴史的な意味があったのだろうか。今回は中西輝政氏に、大局的な視点から読み解いていただいた。中西氏は、「1975年の発足以来、ほぼ50年に近くなるサミットの歴史のなかでも、1、2を争う歴史的な意味の大きさを見せつけたサミットだった」という。それは、なぜなのか。ポイントの第1は、ウクライナへの断固たる支持。第2は、インドなどグローバルサウスの国々の位置づけ。第3は、核兵器だという。それぞれについて、詳述していく。(全2話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分49秒
収録日:2023年5月24日
追加日:2023年6月5日
≪全文≫
―― 皆さま、こんにちは。

中西 こんにちは。

―― 本日は、中西輝政先生にお話しをうかがいたいと思います。中西先生、どうぞよろしくお願いいたします。

中西 はい、よろしくお願いします。

―― 中西先生、まずこの5月に行われたG7サミット、広島サミットでございますけれども、これはどのようにご分析になっていらっしゃいますか。

中西 このサミットは、「日本で開かれた」とか「岸田首相が議長役を務めた」ということとは別次元の評価として、非常に歴史的な意味が大きいサミットだったと思います。国際政治の歴史、そして1975年の発足以来、ほぼ50年に近くなるサミットの歴史のなかでも、1、2を争うほどの歴史的な意味の大きさを見せつけたサミットだったと思います。

―― そんなに大きなものですか。

中西 非常に意義のある、様々な声明が出ましたが、何をおいても、国際政治的に見ても、あるいは思想史のうえから考えても、あるいは21世紀の今後の20~30年という未来を見通したうえでも、非常に大きな分岐点をなす出来事だったと振り返られるように思います。

 その第1の柱は、いま進行中の、ロシアによるウクライナ侵攻(ウクライナ戦争)、この戦争に世界がどう対すべきかということにおいて、非常に明確な方針・方向を打ち出した。このロシアの侵略に対して、本当に重要な世界秩序の柱が崩れるかどうかという大きな瀬戸際にあった世界。これが1年経ってみて、世界が一つになろうとする大きな流れが少し見えはじめた。あるいは、かなり見えた。

 これはG7諸国だけではなく、同時に集まったG20の中心をなしているような招待国(アウトリーチ諸国)、インドなどのグローバルサウスと呼ばれる国々をも巻き込んで、普遍的な価値観をいかにして守っていくか。「国際秩序の基本は何か」ということが、冷戦終了後、あいまいになっていたんですね。しかも一部では、アメリカが一極主義でもって、自由や民主主義を「独自の解釈」で世界に押し付けるような流れもありました。

 もう、アメリカ独自にそうした方向性をめざすのではなく、G7という先進国の枠組みと、それとどこかでつながりを持っているような、あるいは、ともすれば中国・ロシアとG7諸国との中間的位置を模索しようとしている国々(グローバルサウス=インド、ブラジル、インドネシア)に、どういう立場を取らせるかが問われたわけで...

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