ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
民間軍事会社はとても便利…ワグネル創設の背景とその顛末
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(3)ワグネル創設の背景とロシアの思惑
廣瀬陽子(慶應義塾大学総合政策学部教授)
3つのフェーズで考えることができるハイブリッド戦争だが、情報戦を主としたフェーズ1を経て、フェーズ2に至ると、いよいよ軍事的脅迫がなされる。その脅迫は正規軍だけでなく、民間軍事会社も動員して行われるのだが、民間軍事会社としては特にロシア・ウクライナ戦争で有名になったワグネルが挙げられる。そもそもワグネルは表舞台に出てはいけない違法な存在であったが、その活動は活発化していくことになる。なぜワグネルは創設されたのか。その背景とロシアの思惑について解説する。(全7話中第3話)
時間:10分02秒
収録日:2024年7月25日
追加日:2024年10月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●ハイブリッド戦争のフェーズ2:軍事的脅迫


 フェーズ1よりさらにフェーズが上がりますと、今度はフェーズ2になってまいります。

 このフェーズ2というのは、ひと言でまとめると「軍事的脅迫」ということになるわけです。軍事的脅迫の中にも2つの要素を入れ込んでございます。まず1つ目は正規軍の展開ということでありまして、もう1つは民間軍事会社の展開ということになります。

 まずこの正規軍の展開なのですけれど、展開するけれど何もしない。つまり武力を行使しないということがポイントになってまいります。

 具体例をいくつかお話ししたいのですけれど、まず1つ目は2010年、クリミア併合のときになります。クリミア併合の際には、ロシアはまずクリミアに特殊任務部隊を送り込みました。しかし、その特殊任務部隊は、普通であれば軍服を着て、その軍服にはどこの所属かというようなことが、通常、ワッペンなどで記されているわけなのですが、そこに送り込まれた特殊任務部隊は、完全にどこの所属か分からないように、所属などが隠されている状況でした。

 なので、クリミアの人からしますと、「なんだかよく分からないけれど軍人さんがやってきた。どこの人なのだろう。でも、何もしないので文句も言えない」というところで、「ちょっと怖いな」という感情の中で住民投票が行われました。サクッとクリミアの人たちがロシアに移管を望むような結論が住民投票によって導かれまして、それでロシアは、このクリミアはまず独立国なのだと認めた上で、つまりウクライナから奪ったわけではないという体裁をつくって、そしてクリミアを無血で併合してしまうということになったわけです。

 そして、ロシアが行った軍事的展開です。もう2つ事例がありまして、それがこの戦争に直結しているものなのですけれど、2021年の軍の展開になります。ロシア軍はウクライナ国境付近に軍を大量に展開しまして、最初は2021年3月から4月にかけて、約10万人のロシア兵が展開しました。いったん退くのですけれど、秋にまた10万人、そしてそれが2022年2月まで15万人ぐらいにふくれ上がって、そしてそれが気づくと、2月24日にウクライナになだれ込むということで、戦争が始まったということになるのです。

 これもウクライナにとっては非常に嫌な展開でありまして、10万人、15万人と外国...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
一條和生
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ