ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国
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民間軍事会社はとても便利…ワグネル創設の背景とその顛末
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(3)ワグネル創設の背景とロシアの思惑
政治と経済
廣瀬陽子(慶應義塾大学総合政策学部教授)
3つのフェーズで考えることができるハイブリッド戦争だが、情報戦を主としたフェーズ1を経て、フェーズ2に至ると、いよいよ軍事的脅迫がなされる。その脅迫は正規軍だけでなく、民間軍事会社も動員して行われるのだが、民間軍事会社としては特にロシア・ウクライナ戦争で有名になったワグネルが挙げられる。そもそもワグネルは表舞台に出てはいけない違法な存在であったが、その活動は活発化していくことになる。なぜワグネルは創設されたのか。その背景とロシアの思惑について解説する。(全7話中第3話)
時間:10分02秒
収録日:2024年7月25日
追加日:2024年10月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●ハイブリッド戦争のフェーズ2:軍事的脅迫


 フェーズ1よりさらにフェーズが上がりますと、今度はフェーズ2になってまいります。

 このフェーズ2というのは、ひと言でまとめると「軍事的脅迫」ということになるわけです。軍事的脅迫の中にも2つの要素を入れ込んでございます。まず1つ目は正規軍の展開ということでありまして、もう1つは民間軍事会社の展開ということになります。

 まずこの正規軍の展開なのですけれど、展開するけれど何もしない。つまり武力を行使しないということがポイントになってまいります。

 具体例をいくつかお話ししたいのですけれど、まず1つ目は2010年、クリミア併合のときになります。クリミア併合の際には、ロシアはまずクリミアに特殊任務部隊を送り込みました。しかし、その特殊任務部隊は、普通であれば軍服を着て、その軍服にはどこの所属かというようなことが、通常、ワッペンなどで記されているわけなのですが、そこに送り込まれた特殊任務部隊は、完全にどこの所属か分からないように、所属などが隠されている状況でした。

 なので、クリミアの人からしますと、「なんだかよく分からないけれど軍人さんがやってきた。どこの人なのだろう。でも、何もしないので文句も言えない」というところで、「ちょっと怖いな」という感情の中で住民投票が行われました。サクッとクリミアの人たちがロシアに移管を望むような結論が住民投票によって導かれまして、それでロシアは、このクリミアはまず独立国なのだと認めた上で、つまりウクライナから奪ったわけではないという体裁をつくって、そしてクリミアを無血で併合してしまうということになったわけです。

 そして、ロシアが行った軍事的展開です。もう2つ事例がありまして、それがこの戦争に直結しているものなのですけれど、2021年の軍の展開になります。ロシア軍はウクライナ国境付近に軍を大量に展開しまして、最初は2021年3月から4月にかけて、約10万人のロシア兵が展開しました。いったん退くのですけれど、秋にまた10万人、そしてそれが2022年2月まで15万人ぐらいにふくれ上がって、そしてそれが気づくと、2月24日にウクライナになだれ込むということで、戦争が始まったということになるのです。

 これもウクライナにとっては非常に嫌な展開でありまして、10万人、15万人と外国...

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