世界史から見たウクライナ戦争と台湾危機
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
中国は台湾だけでは満足しない…次なる危機はどこに?
世界史から見たウクライナ戦争と台湾危機(4)台湾問題と日本の責任
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
予断を許さない状態が続くウクライナの戦況であるが、それは日本にとってより身近な台湾をとりまく動向とも関わってくる。日本は、ウクライナ戦争を踏まえて、台湾問題に対してどう動いていくべきなのか。隣国として、また主要な利益関係国としてどのように振る舞うべきか、その責任を考える。(全5話中第4話)
時間:10分09秒
収録日:2023年2月28日
追加日:2023年4月19日
≪全文≫

●ウクライナの状況と台湾問題はどのようにつながっているのか


 ウクライナの戦争がいつ終わるのかという問題と並んでたいへん重要なことは、このウクライナ問題からどういう教訓を学び取るか、そしてわれわれ日本人は、このウクライナ問題が、特に私たちにとって最も重要な安全保障や日本の経済をはじめとした、国民生活にも直結する、中国、あるいは台湾の問題、特に台湾危機といかなるリンクをしているのかという点について考えてみることです。

 台湾について申しますと、台湾は日本政府や日本国民も、基本的に一つの中国という観念を認めているわけです。しかし、その一つの中国であるからといって、その傍らにおいて発展している、しかも、法の支配のもとにおいて自由と民主主義を国民と政府が享受し、さらに選挙によって政権交代も可能にしている民主主義国家の台湾が、国家ではなく地域としての台湾がある意味、武力によって中国に併合されるということ、またそこにおいて多くの人々の犠牲あるいは生命財産の喪失といったようなものを、隣国の隣人として黙って見ているだけでいいのかという問題があるわけです。

 台湾は、長らく法の支配のもとにおいて、政権交代も行われてきたわけで、中国が台湾を統合するにしても、われわれはそれが武力によるすこぶる復古主義的な併合ではなくて、あくまでも台湾人の理解や同意によって、関係者や関係各国の了解による営みとして平和的に行われるということを期待しているわけです。この点で心配なのは、習近平国家主席をはじめとする中国首脳の思考法が、抗日戦争、あるいは蒋介石との抗争による中華人民共和国の成立の時点でストップしているということです。


●日本は台湾問題の行動規範を示さなければならない


 つまり、民主化の道をこういう厳しい状況のもとで歩んできた中国の、すこぶる妥協なき圧力のもと、厳しい環境で民主化を進めてきた台湾、あるいは台湾人たちが、ご案内のように世界市場と連結し、そしてグローバル・サプライチェーンの不可欠な輪になっており、半導体を中心とする世界の最新先端技術の担い手でもある日本の企業などでも、台湾の企業や財閥系によって買収もしくは株式を持ち合っている企業も出てきているという現実もあるわけです。

 現在ヨーロッパにおいては、例えばロシアのエネルギーや市場価値にとらわれるあまり、ウクライナの侵...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(2)戦争省とチャーリー・カーク暗殺事件
チャーリー・カーク暗殺事件とは?その真相と政権への影響
東秀敏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏