●ウクライナの状況と台湾問題はどのようにつながっているのか
ウクライナの戦争がいつ終わるのかという問題と並んでたいへん重要なことは、このウクライナ問題からどういう教訓を学び取るか、そしてわれわれ日本人は、このウクライナ問題が、特に私たちにとって最も重要な安全保障や日本の経済をはじめとした、国民生活にも直結する、中国、あるいは台湾の問題、特に台湾危機といかなるリンクをしているのかという点について考えてみることです。
台湾について申しますと、台湾は日本政府や日本国民も、基本的に一つの中国という観念を認めているわけです。しかし、その一つの中国であるからといって、その傍らにおいて発展している、しかも、法の支配のもとにおいて自由と民主主義を国民と政府が享受し、さらに選挙によって政権交代も可能にしている民主主義国家の台湾が、国家ではなく地域としての台湾がある意味、武力によって中国に併合されるということ、またそこにおいて多くの人々の犠牲あるいは生命財産の喪失といったようなものを、隣国の隣人として黙って見ているだけでいいのかという問題があるわけです。
台湾は、長らく法の支配のもとにおいて、政権交代も行われてきたわけで、中国が台湾を統合するにしても、われわれはそれが武力によるすこぶる復古主義的な併合ではなくて、あくまでも台湾人の理解や同意によって、関係者や関係各国の了解による営みとして平和的に行われるということを期待しているわけです。この点で心配なのは、習近平国家主席をはじめとする中国首脳の思考法が、抗日戦争、あるいは蒋介石との抗争による中華人民共和国の成立の時点でストップしているということです。
●日本は台湾問題の行動規範を示さなければならない
つまり、民主化の道をこういう厳しい状況のもとで歩んできた中国の、すこぶる妥協なき圧力のもと、厳しい環境で民主化を進めてきた台湾、あるいは台湾人たちが、ご案内のように世界市場と連結し、そしてグローバル・サプライチェーンの不可欠な輪になっており、半導体を中心とする世界の最新先端技術の担い手でもある日本の企業などでも、台湾の企業や財閥系によって買収もしくは株式を持ち合っている企業も出てきているという現実もあるわけです。
現在ヨーロッパにおいては、例えばロシアのエネルギーや市場価値にとらわれるあまり、ウクライナの侵攻を許してしまったという現実がドイツやフランスにはあるわけです。クリミア半島の侵攻などについても、あるいは東ウクライナ2州の事実上の占領などについても、ドイツのエネルギー問題、フランスも自らの商品輸出、エネルギーの輸入の観点からその問題を取り上げなかったわけです。その結果として、より強烈な今回のウクライナ本国への侵攻があったということになります。
ですから、貿易等において利益関係国である、あるいは世界的なサプライチェーンなどと並んで、日本の主要な商品輸出国であろうということが、われわれにとって非常に重要な、そもそも産業や商品生産を可能ならしめていくところの原理である自由主義的競争や市場の開放といったものを支えているものの考え方を否定することになりかねないのです。
要するに、短期における利潤や儲け、そういうものが重要であるということになりかねないような見方、それが結局、ウクライナへのロシアの侵攻を促したのです。つまり、ロシアはフランスやドイツの足元を見切っていたのです。それから、オバマ大統領のロシアに対する妥協的な姿勢というものを見切っていたということが重要なわけです。
つまり、日本は台湾地域に関して最も重要な利益関係国でもあります。そうすると、この行動規範や行動のモデルというものを、G7のメンバーとしてきちっと示さなければなりません。規範を示すべき国というのはフランスでもなければ、ドイツやイギリスでもないのです。それは基本的に日本だという自覚が、政府と国民がともに、今回のウクライナの問題を見て共有しなければならない価値観ではないかと思うのです。
●台湾有事の際にどの国よりも態度が問われるのは日本
台湾も有事というものが生じるとすれば、これはただちに尖閣有事になり得るだけではありません。台湾は中国によってさまざまな犠牲者をかなり出すでしょう。さまざまなインフラの被害を出すでしょう。そういうことによって犠牲が出た場合に、これはすぐに沖縄を中心とする南西諸島の有事や安全保障上の脅威にもつながります。
台湾がそっくり飲み込まれた場合を想定してみてください。安全保障面で、中国がいうところの第一列島線の一番南の重要な柱である台湾がすっぽりなくなります。そうしたら、対峙するのはまさに尖閣列島、石垣島、そして沖縄の周辺諸島ということになるわけです。
中国にと...