テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

安全保障のジレンマ…「防衛力」を言い出したらキリがない

2024年危機~米中関係の行方(5)米中ロの地政学的関係と日本の防衛力

小原雅博
東京大学名誉教授
情報・テキスト
権威主義的なロシアと中国の連携が強まり、アメリカを筆頭とする民主主義的な国との緊張が高まっている。世界の二極化は今後加速していくだけなのだろうか。両者の対立を激化させず、危機を回避するために必要な日本の防衛力と外交について論じていく。(全5話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:09
収録日:2022/09/06
追加日:2022/12/30
ジャンル:
タグ:
≪全文≫

●強まる中国とロシアの連携、それを阻みたいアメリカの地政学的事情


―― 追加の質問でございます。「ウクライナ戦争をめぐる西側とロシア、中国を代表する権威主義側の対立をめぐる方向性についてご教示ください。またロシアと中国の関係性についてお考えをお聞かせください」ということで、権威主義民主主義、またロシアと中国の関係についてです。

小原 まずロシアと中国の関係については2つの議論があります。どちらが優勢かという問題があるのですが、中国とロシアは長い国境を接して、いわゆる中ソ論争から国境紛争までありました。極めて対立が激しかった時代があり、それゆえにアメリカと中国が関係を改善して、キッシンジャー元国務長官、ニクソン元大統領のときですが、大きな米中ソの関係がガラッと変わり、これが国際政治を大きく変えました。そうした歴史的な意味合いも持つような中国とソ連、中国とロシアの関係なのです。これはこれまでに言ったように、隣の国同士はいろいろな難しい問題を抱えているわけです。

 そういった中で、アメリカからすれば、中ロが一体になって権威主義という体制でまとまって、アメリカを中心とするような自由と民主主義の価値を共有するような陣営との新しい冷戦みたいなものが生まれるのは、僕は望ましくないと思うのです。

 ですから、戦略的には、できれば中国とロシアを引き離したいです。なんとかこの間にくさびを打ち込みたいということなのですが、どうも近年の動きを見ていると、アメリカに対して中ロが手を握って、アメリカを共通の敵として動いているという流れがあるわけです。

 地政学的には、これはアメリカにとって良くないのです。アメリカの対外政策の基本的なところは、ユーラシアが一つの大国、あるいは同盟する2つの大国などによって覇権を握られてしまうということが一番いけないので、これは絶対許してはいけないのです。

 なぜかというと、アメリカの地政学を見たら分かるように、アメリカの北はカナダ、南はメキシコという、軍事的には非常に弱く、かつアメリカとは友好的な国です。東と西は太平洋と大西洋、つまり海です。こうした地政学的に非常に安全で有利な状況に置かれているアメリカと違って、ヨーロッパでは2つの大戦が起きたように、やはりユーラシアは大変です。

 地政学でユーラシアは、ハートランドという、ソ連からロシアにあたる地域とその周辺のリムランドからなるエリアとされ、このユーラシアの覇権を握る者が世界の覇権を握るのだというような言葉もあります。ここをどこかの大国、あるいは2つの同盟する国が握ってしまうと、今度はそこから彼らが自分たちのパワーを世界に拡大していきます。

 そうなると、先ほどのアメリカの地政学的な優位は初めて崩れるわけです。なので、アメリカからすればユーラシアの勢力均衡を保っていくということは非常に大事で、第1次大戦で参戦したのも、第2次大戦で参戦したのも全て、ドイツ、あるいはドイツと日本がユーラシアを席巻してしまわないようにという動機があったのです。これについては「オフショア・バランシング」という言葉があります。イギリスも欧州大陸に対してずっとそれをやってきたのです。欧州でバランスが崩れるような大国が台頭すると、そこに関与してバランスを元に戻すというようなことを、オフショアからやってきたわけです。

 そういう意味で、ロシアにとっては中国が大事ですから、特に今回のウクライナ戦争を通じて、中国を引きつけておかないといけないわけです。中国からしても、アメリカの圧力がどんどん厳しくなってきます。台湾問題もあります。だから、北京オリンピックの時ですが、プーチン氏がやってきて、習近平氏と首脳会談をやりました。あの時に共同声明を出していますが、その中にもはっきりそれを書いているわけです。ですので、お互いにNATOの東方拡大に対するロシアの懸念を中国が理解し、支持をして、台湾の問題について、今度はロシアがこれを支持するというような形で、欧米に対する互いの共通の利益というものを確認し合っているのです。中ロが今の欧米と対立する中で連携を強化してきているという流れがあるのです。

 もちろんこれまでの歴史もあるし、地政学的な難しい点もあるのです。中国がどんどん大きくなると、「一帯一路」といっても、ロシアからすれば経済的にも中国の力がどんどん伸びてきますから、心は非常に複雑なところがあると思います。したがっていろいろな問題があるのですが、現時点ではそういった大きな国際的な勢力図を見る限りは、中ロの連携はかなり今、強まっているということだろうと思います。


●アメリカは対立構図を作るのではなく、あるべき民主主義を実践すべき


小原 その中で、今...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。