●強まる中国とロシアの連携、それを阻みたいアメリカの地政学的事情
―― 追加の質問でございます。「ウクライナ戦争をめぐる西側とロシア、中国を代表する権威主義側の対立をめぐる方向性についてご教示ください。またロシアと中国の関係性についてお考えをお聞かせください」ということで、権威主義対民主主義、またロシアと中国の関係についてです。
小原 まずロシアと中国の関係については2つの議論があります。どちらが優勢かという問題があるのですが、中国とロシアは長い国境を接して、いわゆる中ソ論争から国境紛争までありました。極めて対立が激しかった時代があり、それゆえにアメリカと中国が関係を改善して、キッシンジャー元国務長官、ニクソン元大統領のときですが、大きな米中ソの関係がガラッと変わり、これが国際政治を大きく変えました。そうした歴史的な意味合いも持つような中国とソ連、中国とロシアの関係なのです。これはこれまでに言ったように、隣の国同士はいろいろな難しい問題を抱えているわけです。
そういった中で、アメリカからすれば、中ロが一体になって権威主義という体制でまとまって、アメリカを中心とするような自由と民主主義の価値を共有するような陣営との新しい冷戦みたいなものが生まれるのは、僕は望ましくないと思うのです。
ですから、戦略的には、できれば中国とロシアを引き離したいです。なんとかこの間にくさびを打ち込みたいということなのですが、どうも近年の動きを見ていると、アメリカに対して中ロが手を握って、アメリカを共通の敵として動いているという流れがあるわけです。
地政学的には、これはアメリカにとって良くないのです。アメリカの対外政策の基本的なところは、ユーラシアが一つの大国、あるいは同盟する2つの大国などによって覇権を握られてしまうということが一番いけないので、これは絶対許してはいけないのです。
なぜかというと、アメリカの地政学を見たら分かるように、アメリカの北はカナダ、南はメキシコという、軍事的には非常に弱く、かつアメリカとは友好的な国です。東と西は太平洋と大西洋、つまり海です。こうした地政学的に非常に安全で有利な状況に置かれているアメリカと違って、ヨーロッパでは2つの大戦が起きたように、やはりユーラシアは大変です。
地政学でユー...