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日本を復活させる国家戦略
日本経済復活へ、困難克服のために学ぶべき3つの成功事例
日本を復活させる国家戦略(3)海外と戦後日本に見る逆転のヒント
政治と経済
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
40年近く下降線をたどった日本経済。再び上昇に向かうためにはどうすればいいのか。シリコンバレー、中国など他国の成長著しいその動向と、戦後復興時の日本の戦略を参照し、復活への一手を構想する。(全4話中第3話)
時間:6分08秒
収録日:2022年7月7日
追加日:2022年11月3日
収録日:2022年7月7日
追加日:2022年11月3日
≪全文≫
●参照すべきはシリコンバレー、中国、戦後日本
これまで申し上げてきたことをひと言でまとめます。1980年代末以降の企業の守旧体質について、バブル崩壊の中で積極政策が取れなくなりました。そして官民の戦略産業という考え方が消えてしまいました。これは、アメリカに叩かれたこともあるのですが、その上、高齢化と出生率の低下で財政赤字が伸びたことで、日本経済が長期的な衰退に陥ったのです。その結果、日本は輸出立国ではなくなり、輸入依存の中進国で、富がどんどん流出し貧困化が進みました。
長い間続いたこの衰退傾向を逆転させて、新たな発展につなげることは可能でしょうか。われわれがみんなで考えなければいけません。そのために、参考にすべき例があるのです。
一つは、シリコンバレーです。シリコンバレーは、1980年代中盤に世界の半導体産業の中核基地だったわけですが、日本に席巻され、これではけしからんと、アメリカは軍官民学が一体となって日本打倒戦略を組んでいくのです。シリコンバレーの復権に総力をかけました。特に、スタンフォード大学を中核にしたエコシステムと、当時の科学史を完全に変えたアルゴリズム革命です。コンピュータの能力が非常に高まったものですから、サンプリングではなく、全数で計算ができます。そうなると、人間の能力を超えるものですから、AIが全て計算するのですが、それをアメリカのGAFAが徹底的に活用し、科学の歴史を変えてしまったのです。そのような動きがたまたま重なり、アメリカの情報産業は世界制覇を実現しました。日本にやられていたアメリカが、10年~15年ほどで背中が見えなくなるほど完全に追い越したという成功例があるのです。これを日本はよく分析すべきだと思います。
もう一つは中国です。中国は鄧小平が、改革開放戦略で目覚ましい高度成長を持続しました。中国はおよそ20年間で、世界のシェアの3パーセントから15パーセントまで大きくなり、そのおかげで中国の賃金が高くなったのですが、いわゆる中進国の罠に直面したのです。そのままでは、先進国の技術で世界に輸出するということは通用しなくなったので、中国自体がイノベーションしなければいけなくなりました。
ここで、習近平が見事に「量的成長から質...
●参照すべきはシリコンバレー、中国、戦後日本
これまで申し上げてきたことをひと言でまとめます。1980年代末以降の企業の守旧体質について、バブル崩壊の中で積極政策が取れなくなりました。そして官民の戦略産業という考え方が消えてしまいました。これは、アメリカに叩かれたこともあるのですが、その上、高齢化と出生率の低下で財政赤字が伸びたことで、日本経済が長期的な衰退に陥ったのです。その結果、日本は輸出立国ではなくなり、輸入依存の中進国で、富がどんどん流出し貧困化が進みました。
長い間続いたこの衰退傾向を逆転させて、新たな発展につなげることは可能でしょうか。われわれがみんなで考えなければいけません。そのために、参考にすべき例があるのです。
一つは、シリコンバレーです。シリコンバレーは、1980年代中盤に世界の半導体産業の中核基地だったわけですが、日本に席巻され、これではけしからんと、アメリカは軍官民学が一体となって日本打倒戦略を組んでいくのです。シリコンバレーの復権に総力をかけました。特に、スタンフォード大学を中核にしたエコシステムと、当時の科学史を完全に変えたアルゴリズム革命です。コンピュータの能力が非常に高まったものですから、サンプリングではなく、全数で計算ができます。そうなると、人間の能力を超えるものですから、AIが全て計算するのですが、それをアメリカのGAFAが徹底的に活用し、科学の歴史を変えてしまったのです。そのような動きがたまたま重なり、アメリカの情報産業は世界制覇を実現しました。日本にやられていたアメリカが、10年~15年ほどで背中が見えなくなるほど完全に追い越したという成功例があるのです。これを日本はよく分析すべきだと思います。
もう一つは中国です。中国は鄧小平が、改革開放戦略で目覚ましい高度成長を持続しました。中国はおよそ20年間で、世界のシェアの3パーセントから15パーセントまで大きくなり、そのおかげで中国の賃金が高くなったのですが、いわゆる中進国の罠に直面したのです。そのままでは、先進国の技術で世界に輸出するということは通用しなくなったので、中国自体がイノベーションしなければいけなくなりました。
ここで、習近平が見事に「量的成長から質...
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