●DX実現のための法整備が急務
最後に、皆さんに私なりの提案を申し上げて締めくくりたいと思います。
一つは、この凋落を逆転する戦略の構想と、それを策定することです。非常に大きいことが2つあるのです。まずDXの環境を整備しなければいけない。DXとは、デジタルトランスフォーメーションのことです。
日本は、例えば国民に10万円を配るだけでも、うまくいかずに何カ月もかかったという恥ずかしい国です。ほとんどの国は1週間ぐらいでそれができているわけです。なぜできないかというと、役所の縦割りです。それから、システムが違う。システムを変えるとき、「ベンダーの契約が15年先まで埋まっているからできません」と言うと、その先を越えられない。これは、戦後の民主主義があまりに政治の力を削減してしまったということもあると思います。なので、戒厳令など敷けません。国家戦略も池田首相の時にはギリギリやりましたが、もっと強力にできるように変えなければいけません。
ですから、黄金の3年間があるのなら、憲法から変えて、国家の危急のときには国家権力でいろいろなことができるようにしなければいけないのです。そうすると、本当はDXは2~3カ月でできなければいけません。(前首相の)菅義偉さんが一所懸命、デジタル庁をつくりましたが、全然動いていません。つまり、基本的な骨格になる法律や国家戦略で動かせるようになっていないのです。
民間企業で見ると、例えば宅配や航空会社、交通産業でも、スマホ1つで全部分かります。航空機の予約もそうです。民間企業でそれができるのに、なぜ国家ができないのでしょうか。民間企業でやれるような指揮命令系統を、国家の中につくり変えられるような法律体系からつくらなければいけないのですが、それは、日本の今の「民主主義」では少し難しいのです。強力な法体系の整備が必要で、それができるかどうかです。
それが韓国はできている。エストニアもできている。なので、日本も黄金の3年間でやればいいのです。
●適材適所で多様な労働力を生かす制度改革を
(逆転戦略の構想・策定において、大きなポイントのもう一つは)適材適所です。官庁も民間大企業もそうですが、組織が硬直的で、多様で有能な労働力が活用できていないのです。既存の組織、人事制度の抜本改革が必要です。成果報酬体系になっておらず、合法化もされておらず、制度化もできていません。これは本気でやればできるのです。
それから、旧来型の職業訓練についてですが、以前は企業が内部訓練を行い、高度成長しました。労働省と公的訓練機構も訓練を行うのですが、それは全然時代遅れで、どんなに逆立ちしても、100万人ぐらいしかできません。数千万人が最新の技術に対応しているときに、少なくとも彼らの税負担は全部控除して、プラス何兆円かをかけて、補助金を渡してもいい。つまり、自分でやれということです。情報はもう山ほどあり、スマホ一つ見れば、すぐに分かります。そうすれば、情報環境と適材適所が実現できるのです。これが基本だと思います。
●官民が連携した国家戦略の推進
(私なりの提案の)もう一つは、戦略産業を指定することです。恐縮ですが、岸田さんの「新しい資本主義」、あれは七夕資本主義で、短冊がぶら下がっている、あるいはクリスマスツリーのお飾りはたくさんあるけれど、基本的なものに一つもつながっていないのです。
それはなぜかというと、テクノロジーマッピングをしていないからです。戦略産業の指定もしていません。国家戦略として、金融支援や産業支援、政策支援をすることになっていないのです。日米半導体協定で腰骨を折られ、頭蓋骨を壊されて、もうそのような国家戦略的なことを言ってはいけないという流れになっています。世界各国は国家戦略的な支援を行っているのです。アメリカも、中国も、エストニアも、イスラエルも行っています。行っていないのは日本だけではないでしょうか。
今は、もう個別の産業ではとても対応できないような時代になっていいます。だから、国が中に入って本格的にやると、口先では言っていますが、全く制度が追いついていないので、それはやらなければいけません。アメリカ、中国、イスラエル、北欧諸国、バルト諸国のエストニアも必死です。
それから、アメリカはいろいろと国家戦略のプロジェクトをやるのですが、近年で最初にやったのは(第二次世界大戦中の)マンハッタン計画でしょう。日本に原爆を落とすためですが、アメリカはそれを実行し、日本に勝っているわけです。その次はアポロ計画です。月に最初に到達しました。そして、シリコンバレーもそうなのです。軍と民と学...