●数字に大雑把だがとても勘のいいトランプ氏
【質問】
―― アメリカ政府やアメリカ国民は、日本をどの程度、同盟の相手として尊重してくれるのでしょうか。また、以前にトランプ氏が大統領になった時、「日米同盟を見直す」と発言されたことがありました。アメリカ人からすれば、「そんなものに税金を使う必要があるのか。条約を維持する必要があるのか」と考えるようになることはないのか。つまり、日米安全保障条約を、私たちはどの程度、信頼してよいのでしょうか。
杉山 後段の方から行くと、私はいろいろなところで話していますが、なぜ安倍さんがトランプさんにとってよかったかというと、大統領に就任する前に、(2016年)11月にトランプタワーに行って、90分話したことが非常によかったのです。
それから、最初の首脳会談、(2017年)2月9日にホワイトハウスで、それからマー・ア・ラゴに行って、27ホールのゴルフがあった時です。あの時はまだ政権が立ち上がったところで、TPP離脱で経済をどうするかが非常に大きかったのですが、安保のほうはそれなりにまとまったのです。「本当にこの人は分かっているのかな」と(思っていたのですが)、すんなりまとまってしまったのです。
あの時はスティーヴ・バノンという人がいて、今は国家安全保障会議(NSC)に行かれた秋葉剛男さん(現・国家安全保障局長)が(当時)担当の外務審議官だったので行って、全部やってくれたのですけれど、大丈夫かと確かめてもらったら揉めて、最後にバノンがトランプさんに言って「もういいよ」ということになるのです。
なぜ「いいよ」ということになったか。本当に中身を分かっているのかなと思ったのは、「これ、誰が書いた?」と。「いやいや、日本側の提案なのだけれど、うるさいからこれでもうしょうがない、まとめますからね」と言ったら、「だから、誰が書いたのだ」と言うから、「日本です」と言ったら、「そうか、(安倍)晋三が書いたのか」と。「そうです」と言うと、「おお。晋三が書いたのだったらいいよ」と言って、中身を読んでいないのだと思うのです。
だからそれは、申し上げるのはあれですけれど、ヨーロッパの首脳と彼がうまくいかなかった。ヨーロッパの首脳はだいたいそうですが――ボリス・ジョンソンさんはそうではなかったかもしれないけれど――あとの首脳、典型的にはメルケルさんですけれど、もの...