「同盟の真髄」と日米関係の行方
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本が中心?…東アジアの安全保障は「ラティスライク」に
「同盟の真髄」と日米関係の行方(2)東アジア安全保障の新たな形
杉山晋輔(元日本国駐アメリカ合衆国特命全権大使)
2024年4月8日~14日に岸田文雄首相の米国公式訪問があった。9年ぶりとなった日本の首相の公式訪米は、いったいどんな成果を日本にもたらしたのだろうか。「統合指揮権」「『ハブ・アンド・スポーク』から『ラティスライク』へ」という2つのキーワードで、今回の訪米の安全保障面での意義を解説する。(全8話中第2話)
時間:13分50秒
収録日:2024年4月23日
追加日:2024年6月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●日米の「統合指揮権」?


 今回は、このあいだ(2024年4月)の岸田文雄総理の訪米の持つ意味がどういうことだったかということを、時間をいただいて話をしようと思います。

 岸田さんが行かれて、(現地に)着かれた翌日にすぐにあの日米首脳会談をやられて、共同声明を出しています。ファクトシートも出て、それから共同の記者会見に臨まれました。これは4月10日の午後だったと思いますが、11日には上下院合同の会議で、アメリカの議会演説をされるなど、盛りだくさんな日程でした。そこで話し合われたこと、特に共同声明は、かなり詳しくいろいろなことが書いてあります。ちなみに日米安保の統合指揮権は、日米でジョイント・タスクフォースができるというような議論がありますが、それは全く違います。

 日本は、陸海空の3自衛隊について、統幕議長が指揮権を持っているわけではないのです。統合した指揮権を持っている人を制服(武官)の中に作ったほうがいいという日本側の問題意識で、(2024年)年末までにはそれができるそうです。

 同時にアメリカは、在日米軍を含めてこの地域を管轄して指揮権を持っているのがハワイのINDOPACOM(インド太平洋軍)のfour-star general(大将)です。そうすると、在日米軍の司令官には指揮権がありませんから、日本側の全体の指揮権を持っている人とmilitary to military(軍同士の交渉)でハワイの人とやるのは、毎日のようにface to faceではできません。いくらインターネットがあるとはいえ(難しい)。

 それをもう少しうまくコンバインして(統合指揮権ではありませんけれど)、より緊密な意思疎通ができるようにしようというのは、日本側の問題というより、むしろアメリカ側がINDOPACOMのfour-star general(インド太平洋軍の大将)の持っている指揮権をどのように横田の指揮官に委譲するかしないか(という問題)です。

 ちなみに、この地域での在韓米軍総司令官は、four-star generalがいるので、ハワイにあるINDOPACOM(インド太平洋軍大将)と同格です。なぜかというと、朝鮮動乱の時があったからです。マッカーサーが朝鮮国連軍、在韓国米軍総司令官に任命されます。当時の李承晩(イ・スンマン)大統領が這う這うの体でずっとプサンまで逃げていく時ですけれど、すぐにマッカーサーに手紙を書いて、全軍の指揮権をマッカーサーに委譲します。

 1994年、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ