●チベット、内モンゴル、新疆ウイグル…深刻化する中国の人権問題
―― 皆さま、こんにちは。本日は橋爪大三郎先生に「中国共産党と人権問題」というテーマでお話をいただきたいと思います。橋爪先生、どうぞよろしくお願いいたします。
橋爪 よろしくお願いします。
―― 橋爪先生は『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)という本と、『中国 vs アメリカ: 宿命の対決と日本の選択』(河出新書)という本をお書きになりました。中国共産党のあり方や、それがもたらす問題について、いろいろと分析されています。
今回のテーマは「中国共産党と人権問題」です。今、特に欧米を中心に、ウイグルや香港、あるいはチベット等での人権がかなりひどい状況になっているのではないかといった批判が高まっています。具体的にはどういう状況なのでしょうか。
橋爪 これは今に始まったことではありません。中華人民共和国が成立してから、いろいろなことがありました。まず人々の記憶に残っているのはチベットで、次に内モンゴル、さらに今回の新疆ウイグルです。他にもいろいろあるのですが、中華人民共和国が成立して、中国の一部に編入されている人々が、必ずしもそのことに納得していない、あるいは満足していない状況がありました。これを何とかしようと、北京政府や中国共産党は武力を使って反対派を押さえ込むという多少手荒なことをやりました。
外部に情報が出てこなかったので、中国のことはなかなか分からなかったのですが、ダライ・ラマがインドへ逃げたりして、チベットで何かいろいろなことが起こっていることが伝わってきました。ただ、これはかなり昔の話で1960年代です。それから、内モンゴルも実はいろいろなことがあって問題が続いています。そして、新疆ウイグルも同じようなことがあり、特にここ10~15年ぐらい、非常に深刻な状態になっています。
そこには、イスラム勢力が世界各地で大変活発に活動していることに理由があります。中央アジアやアフガニスタンあたりは地続きでムスリム同士なので、そういう運動が中国に波及してきたら困ると深刻に考えています。そのため、いろいろなアクションを取っているのですが、海外からは大変過剰に見え、人権問題に当たるのではないかと心配されています。
●人権は「内政干渉」という考え方を超えた原理
―― 欧米ではこれを「ジェノサイド」とい...