●伝統中国を基礎付ける儒教の役割
最後に中国です。伝統中国の標準形には、皇帝がいます。また、皇帝には「宗族」と呼ばれる親族集団がいます。さらに、政府職員である官僚がいます。選抜試験があり、科挙に合格すると官僚になることができます。こうした一般庶民と行政官僚とトップの皇帝によって成り立つ仕組みが、伝統中国のやり方です。このように社会を運営するべきだと説明しているのが、儒教です。
儒教で強調されていることが2つあります。1つは「忠」で、もう1つは「孝」です。どちらも服従を意味するのですが、「忠」とは政治的リーダーに服従することです。すなわち、上役に服従することなのですが、究極的には皇帝に服従することを指します。「孝」とは、血縁に年長者と年少者がいるとすると、年長者に服従するという教えです。極端に煮詰めていえば、親に服従するということです。
服従すると何が生まれるかというと、秩序です。誰が偉いのかがよく分からないために、混乱は生じるという考え方です。『4行でわかる世界の文明』(角川新書)という本にも書きましたが、偉い人が2人いると、“くんずほぐれつ”になってしまいますが、儒教の考え方に従えば、あらかじめ順番が決まっていることになります。
●服従による秩序の仕組みである忠と孝
親族の場合、年齢によって判断できるので、どちらが偉いかは一応決まります。家族の場合、兄か弟かというように決められます。しかし、親族でもいとこの場合、年齢が上だったとしても、弟の系統だと偉くない場合もあるため、分かりづらくなることがあります。こうしたケースを避けるために、細かく仕組みがつくられています。例えば、兄弟がおり、男性の4人兄弟だとすると、1番上のお兄さんは大哥です。2番目のお兄さんは二哥です。それから3番目、4番目、と続きます。これを横で聞いていると、同じ兄でもどっちが偉いかが客観的に分かります。
日本の場合、弟と兄は身分が違うので区別しなければなりません。しかし、お兄さんが2人いた場合、どちらが偉いお兄さんか表示されません。そこまでのことは社会が要求していないのです。それに対して中国では社会が要求しているので、このような呼び方になっています。お姉さんも同じです。
例えば、もし4番目の兄弟に子どもが生まれた場合、上のお兄さんたちをどう呼ばれることになるのでしょうか。お兄...