宗教で読み解く「世界の文明」
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
中国儒教では忠と孝のうち孝のほうが大事
宗教で読み解く「世界の文明」(6)中国文明における儒教
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
伝統中国を基礎づけているのは儒教である。忠と孝という考え方によって、人々の間の序列を明確にし、社会秩序を保つことを可能にしている。現代の中国共産党も、こうした儒教的性質から理解できる。(2019年11月12日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「宗教で読み解く世界」より、全9話中第6話)
時間:15分14秒
収録日:2019年11月12日
追加日:2020年5月31日
カテゴリー:
≪全文≫

●伝統中国を基礎付ける儒教の役割


 最後に中国です。伝統中国の標準形には、皇帝がいます。また、皇帝には「宗族」と呼ばれる親族集団がいます。さらに、政府職員である官僚がいます。選抜試験があり、科挙に合格すると官僚になることができます。こうした一般庶民と行政官僚とトップの皇帝によって成り立つ仕組みが、伝統中国のやり方です。このように社会を運営するべきだと説明しているのが、儒教です。

 儒教で強調されていることが2つあります。1つは「忠」で、もう1つは「孝」です。どちらも服従を意味するのですが、「忠」とは政治的リーダーに服従することです。すなわち、上役に服従することなのですが、究極的には皇帝に服従することを指します。「孝」とは、血縁に年長者と年少者がいるとすると、年長者に服従するという教えです。極端に煮詰めていえば、親に服従するということです。

 服従すると何が生まれるかというと、秩序です。誰が偉いのかがよく分からないために、混乱は生じるという考え方です。『4行でわかる世界の文明』(角川新書)という本にも書きましたが、偉い人が2人いると、“くんずほぐれつ”になってしまいますが、儒教の考え方に従えば、あらかじめ順番が決まっていることになります。


●服従による秩序の仕組みである忠と孝


 親族の場合、年齢によって判断できるので、どちらが偉いかは一応決まります。家族の場合、兄か弟かというように決められます。しかし、親族でもいとこの場合、年齢が上だったとしても、弟の系統だと偉くない場合もあるため、分かりづらくなることがあります。こうしたケースを避けるために、細かく仕組みがつくられています。例えば、兄弟がおり、男性の4人兄弟だとすると、1番上のお兄さんは大哥です。2番目のお兄さんは二哥です。それから3番目、4番目、と続きます。これを横で聞いていると、同じ兄でもどっちが偉いかが客観的に分かります。

 日本の場合、弟と兄は身分が違うので区別しなければなりません。しかし、お兄さんが2人いた場合、どちらが偉いお兄さんか表示されません。そこまでのことは社会が要求していないのです。それに対して中国では社会が要求しているので、このような呼び方になっています。お姉さんも同じです。

 例えば、もし4番目の兄弟に子どもが生まれた場合、上のお兄さんたちをどう呼ばれることになるのでしょうか。お兄...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治