宗教で読み解く「世界の文明」
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なぜ仏教は5番目の文明とみなすことができないのか
宗教で読み解く「世界の文明」(7)質疑応答編その1
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
仏教はなぜ4大文明に続く5番目の文明にならなかったのか。手がかりとなるのは、ヒンドゥー教や儒教など、他の文明を形作った宗教との対抗関係と、仏教の教義に見られる特性である。講演後の質疑応答編その1。(2019年11月12日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「宗教で読み解く世界」より、全9話中第7話)
時間:5分28秒
収録日:2019年11月12日
追加日:2020年6月7日
≪全文≫

●なぜ仏教は5番目の文明として見なすことができないのか


―― 仏教文明は、4大文明に続く5番目として、どうして考えられないのでしょうか。

橋爪 仏教徒は10億人もいないですね。どんなにかき集めても、2億人ぐらいでしょう。東南アジアに少しいますが、それで終わりです。一番、人数が少ない文明は、10億人程度です。ですからそこから下は、無視しています。

 重要でないという意味ではありません。中国、朝鮮、日本では、仏教の影響がとても大きいからです。しかし、仏教は独自の文明をつくるほどの、インパクトを残しませんでした。仏教だけで国をつくったのは東南アジアだけです。人数が少ない、という理由で取り上げませんでした。

―― 神道は、もっと少ないということですか。

橋爪 神道はますますインパクトがありませんね。だから神道は、カルチャーです。

―― それでは、仏教もカルチャーですか。

橋爪 いえ、仏教は普遍思想です。

―― 普遍思想ではあったが、文明を形成するまでに至らなかったということですね。

橋爪 普遍思想ではありますが、10億人単位の文明を形成しませんでした。

―― その理由は、簡単にいうと何ですか。

橋爪 ヒンドゥー教に負けてしまったからです。

 仏教が盛んになったのは、通商、つまりビジネスやトレードが発達した時代です。そのため、主たる担い手は商人でした。商人とは、ヒンドゥー教のカースト制というと、ヴァイシャです。商人はお金の計算をするので、合理的です。そして、外国人と付き合います。だから国際性もあります。インドは一度、この方向に進みそうになりました。アショーカ王の時代(紀元前3世紀頃)です。かなり仏教に力点を移した時代でした。

 しかし、仏教の組織的な弱点は、出家主義です。誰でもみんな、真理にアクセスするのですが、真理にアクセスするためには、瞑想しなければならず、基本的にフルタイムです。そのため、労働現場から離れてフルタイムで瞑想する集団「サンガ(僧伽)」をつくり、そこで修行をします。その人たちは働かないので、食べ物などを働いている人から供給してもらわないといけないので、在家の人たちを必要とします。

 出家主義は非常に弱いものです。出家主義のもとで、仏教はバラモンをつくらない代わりに、先述したように出家者の集団というものをつくりました。そうすると、在家の人が必...

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