おもしろき『法華経』の世界
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『法華経』と「神道」はアバター!?通底する世界観とは
おもしろき『法華経』の世界(2)『法華経』と「神道」の共通性
哲学と生き方
鎌田東二(京都大学名誉教授)
聖徳太子、最澄、空海、日蓮、宮沢賢治など多くの人に多大な影響を与えてきた『法華経』は長い年月にわたり日本宗教史を貫いてきた存在である。『法華経』は、苦悩を前提としつつ、むしろそうであるがゆえに明るい未来や救済の未来を描き出す。その世界観は、『古事記』はじめ「神道」の思想に貫かれている「天壌無窮」「修理固成」「むすひ」などの考え方とも、深い部分で大いに共通していると、鎌田東二氏はいう。やはり、日本古来の「神仏習合」こそが真の姿であることが、とてもよく見えてくるのである。(全10話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分30秒
収録日:2025年1月27日
追加日:2025年5月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●日本宗教史を貫いてきた『法華経』の流れ


―― 鎌田先生には以前、神話の比較の講義をしていただいたことがあります。例えば北欧の神話などは、ある意味では…。

鎌田 暗いですね。

―― 暗くて、破滅に向かうようなものだったりすると。それに対して、日本の神話は天壌無窮…。

鎌田 天壌無窮、まさにそうですね、『法華経』は天壌無窮ですね。

―― ずっと未来へ、ですね。それこそ何十億という過去から何十億という未来に向かって突っ込んでいくような雰囲気です。

鎌田 こんなに明るい経典はないですね。

―― そうですか。やはり他の経典と比較しても、そういうものなのですか。

鎌田 経典ではないですが、『選択本願念仏集』も「地獄だから、今は」「末法だから」と称しているので、闘争の世界、修羅の世界ということで、暗いではないですか。

 『法華経』ももちろん「現実は暗い」ということを前提にしてはいますが、『法華経』ほど明るい(ものはない)。「もう大丈夫だよ」と言ってくれる。タイ語でいうと「マイペンライ」、沖縄の琉球言葉でいえば「なんくるないさー」です。要するに「本当に大丈夫よ」、"Everything's OK"ということで、『法華経』は人々に安心を与えます。

 でも、日蓮は末法の時代の『法華経』を打ち出すのに、いろいろな経典の中で使われる「七難」という(概念を)使いました。これは災難が七つあるということで、他国に侵略される難、国内で内乱が起こる難など、いろいろなことが書かれている。それらを読み解いて、(『立正安国論』の中で、)「承久の乱」のような国内の反乱、「蒙古襲来」のような外敵の侵略を予言しています。

 そのような難から立正安国し、すなわち救われるためには『法華経』を信じる世界にならないといけない。『法華経』を現実的な救済の経典にして、それを国家のガバナンスと結びつけていこうという運動を、日蓮は起こした。それが現代に引き継がれているので、けっこう激ヨワですね。

 「大丈夫」ということで、具体的な宗教的活動や宗教的信念の後押しをずっとやってくれた点では、聖徳太子が挙げられます。彼は『三経義疏』の中で、『法華経』『勝鬘経』『維摩経』を注釈したとされています。この選択眼、『法華経』を選んでいるというところが、聖徳太子のすごさでしょう。

―― そうですね。

鎌田 そして、それが和の国の救...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
イスラム教におけるシーア派とスンニ派の違い
イスラム教スンニ派とシーア派の違いとは?
山内昌之
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(6)習近平のレガシー
国力がピークアウトする中国…習近平のレガシーとは?
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(1)真実の創作
プラトンの『ソクラテスの弁明』は謎多き作品
納富信留