●「何百億、何千億という世界で衆生を導いて、救済してきたのだよ」
鎌田 そして、「この如来の言葉を皆さん信じなさい」というのです。仏の言葉(仏語)を信受して、たてまつる。
例えば、ここには「弥勒をはじめとして、合掌して仏に(申しあげた)」とあります。「弥勒が先頭を切って、お釈迦さまの真実の教えを説いてください」ということで、みんな「信受仏語(仏の言葉を信受しろよ)」と言っている。そしてここで、「如来秘密」や「神通力」ということが語られるわけです。
「如来秘密」といえば密教の重要言語です。暗号世界に入っていく際のパスワードです。「三密の世界」に入っていくための前身というかオープニングが、『法華経』の中にあるわけです。
そして、弥勒菩薩が先頭を切り、一切の声聞、辟支仏、無漏智(知恵を漏らさぬ最も叡智の高い者)たちに対して、仏がいろいろな教えを説いて、臨機応変に説いていく。
その臨機応変の中で、「余処の百千万億那由他阿僧祇の国に於ても衆生を導利」する。つまり、私は悟って──というか、この存在世界にずっと常住して──「我常に此の娑婆世界に在って説法教化」をやってきた。なので、いろいろなところ、「百千万億那由他阿僧祇国」といえるような数(=何百億、何千億という数)の世界や国々があり、そういう諸国の中で衆生を導いて、救済してきたのだよ、と。
そして、あるところでは、中間に於て「燃燈仏」として現れて、説いた。「皆方便を以て分別」した。方便を以てみんなに臨機応変に、分かりやすいように説いてきたということです。
そして、仏眼を以て、人々の条件やレベルを見る。「この人はこういう傾向性を持っていて、こういう知的な関心やレベルがあるので、それに応じて臨機応変に説いていきますよ」というのが「諸根利鈍を観る」です。
「又種々の方便を以て微妙の法を説いて、能(よ)く衆生をして歓喜の心を発(おこ)させた」。みんなをハッピーにした。「この教えを聞いて、本当に救われました。希望を持てました。私たちはこんなに救済に近いところにいて、その道筋がよく理解できました」。こういうようなことをずっと臨機応変に方便として説いてきたのだということが、繰り返さ...