逆境に対峙する哲学
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
3.武士道に学ぶ自己訓育――幻想としての順境に抗するために
2025年12月26日配信予定
4.天譴説という儒教の知恵――統治のあり方を点検するために
2025年12月27日配信予定

5.大慈大悲の教え――なぜ仏像は怖い顔をしているのか
2026年1月2日配信予定
6.ネガティブ・ケイパビリティとは?信じて待つことの意味
2026年1月3日配信予定
7.タイトル未定
2026年1月9日配信予定
8.タイトル未定
2026年1月10日配信予定
9.タイトル未定
2026年1月16日配信予定
10.タイトル未定
2026年1月17日配信予定
講義一覧を見る▼
西洋には逆境は神が与える運命という考え方があり、その運命をいかに克服するかを考えたのがストア派だった。しかし、神道が説くように「ヒトもカミ」であれば、それに気づく瞬間は逆境の中にこそ存在するはずである。「他者である世界」との出会いには、ブッダが「如実知」と読んだ悟りの視野が必要なのか。(全10話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:16分54秒
収録日:2025年7月24日
追加日:2025年12月20日
≪全文≫

●逆境の定めは絶対、超越、全知全能の神が与える?


五十嵐 例えば西洋哲学だと「超越者」という言葉があって、神は超越者というふうに言われてますよね。超越者というのは「超えているもの」だから、それこそ「カミ」という、「上に」超えている、あるいは破れている「向こう側」にあって、ギクっとしてしまうもの。「絶対者」というふうにも言われていて、でも、どうすることもできない(存在)。うん。

津崎 特にさっちゃんと僕はヨーロッパの哲学思想を長く勉強してきているので、どうしてもキリスト教の神を念頭においてしまう。超越とか絶対というキーワードが出てきたけれども、あと付け加えるべきは唯一ということだよね。それから、全知全能である。これが、絶対ということと関わってくる。

 超越とはどういうことかというと、この世界をつくったということだよね。神は創造者であり、私たちはその被造物である。その関係性はもう絶対に超え難い、超えることができない距離である。その限りにおいて超越している。だから、前回、洋ちゃんから出てきた「人もカミである」というのはキリスト教の世界観からすると、ちょっとあり得ない。唯一の例外はイエス・キリストだけであるということです。

 そうなってくると、ヨーロッパの哲学の中で、絶対、超越、全知全能のような神が、私たちにとっては避けることができない運命として立ち現れてくるような逆境をしつらえたんじゃないかというような考え方が出てくるわけだよね。

五十嵐 うん。おもしろーい。

津崎 何でこんな目に遭うのか、自分はそういう定めなのだ。でも、この定めはいったいどこから来るのか。絶対的な、暴力的な仕方でこの私に立ちはだかってくるような、この定めとはいったい何か。それは、神が定めたことではないか。そういうことが、例えば古代ギリシア・ローマのストア派の人たち──特にセネカやマルクス・アウレリウスやエピクテトスなど、古代ローマの人の中には、運命観のようなものとしてある。もう、あちら側だよね。

 そして、人間はことごとくそれに隷属してるんだというような、やや厳しめの人間観が、逆境の中で立ち現れてくる哲学の一つの考え方として出てくる。そういうことを、神道におけるカミについての洋ち...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治