人生に逆境はつきものだが、その中でわれわれは変化し成長していく。そこで大切なのは、これまで話題になってきた本居宣長や白隠やモンテーニュなど、先人たちが何を考えどう生きてきたかを知識として知ることだ。彼らの知識を携えることによりわれわれは先人を友とし、逆境を生きていくことができるのだ。(全10話中第9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●誰でも逆境の中で変われる、変われば逆境がなくなる
津崎 最初の話に戻ると、逆境というのはデフォルトというか私たちの人生は逆境だらけと言える。
五十嵐 だから逆境を避けるべきではない、というのが、ここまでの話の中で一つ言えることかなと。「逆境を恐れる」ことがむしろ「逆境を作り出す」ことも私たちは話してきて、恐れる人ほど逆境をたくさん作ってしまう。
津崎 そうそう。思いが逆境を焚きつけるわけだからね。
五十嵐 そうそう。だから、逆境を怖がる人ほど逆境を大きくしてしまい、たくさん作ってしまう。だったら、「逆境を恐れるべき」という考え方をちょっと変えてみる可能性だってあっていい。逆境を恐れるんじゃなくて、逆境に対して「さあどうなるのかな」と考える。その逆境の中で、自分がどう変化できるのかということを待つ。そういうことは、分別じゃなく智慧として可能なことなんじゃないかと思います。
だって自分だけじゃなくて、これまでたくさんの人がそういうことをしてきたわけだから。それぞれの身の丈に合った逆境の中で、白隠和尚だって他の人だってみんな変化してきた。だから私も、この逆境の中で変化するんだろうな、ということ。それは神を「信じる」のとは違う意味で、「誰でも逆境の中で変わる、そして、自分が変わったときにその逆境がなくなる」ということを経験的な事実として「知る」ことができるのかと思います。
全員 (うなずく)
五十嵐 何か言って(笑)。
津崎 話がつながるかどうか分からないけどね。今日は僕自身、専門がデカルトだから、それに先立つ16世紀のリプシウスやモンテーニュを持ってきて、エピクテトスの話をしたんだけど、最終的には彼が述べていることに行き着くのかという印象が強い。彼は、「自分自身の力の及ぶ範囲と及ばない範囲を明確に区別しなければいけない。これを混同することが悩みの種だ」という言い方をしています。
では、自分が完全にコントロールできるもの、自分の圏内、権力や権能の中にあるものは何か。それは「自分の思い」であり、感情、判断、思考である。それで、やや広く「思い」という言い方をするけれども、これは完全にコントロールできる。だけど絶対にできないものは何かというと、肉体や財産──あるいは(白隠)和尚の話で「こんなことをし...