逆境に対峙する哲学
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
大慈大悲の教え――なぜ仏像は怖い顔をしているのか
逆境に対峙する哲学(5)阿頼耶識・大慈大悲・大智
唯識でいわれる阿頼耶識は人それぞれが持つ語りの集積であり、個人によって当然異なる。それが「空」で実体がないと気づくと、人との垣根は取り除かれる。境界に実体はないと知るのが「大智」で、全員を平等に愛するのが「大慈大悲」である。共通の逆境である災厄のときには、共感のあり方がさまざまに試されていく。(全10話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:16分15秒
収録日:2025年7月24日
追加日:2026年1月2日
≪全文≫

●語りによって生かされ語りの犠牲であるわたしたち


五十嵐 よく仏教では──私が洋ちゃんに対して仏教のお話をするってあれですけど──仏教の中には小乗仏教と大乗仏教というのがあるとすると、大乗仏教の一番の基礎は「慈悲」だ、と言われていて、それが「仁」だと思います。そして、大乗仏教が、「自分」と「自分の大事な者」以外の人たちに対しても、「分け隔てのない慈悲」を持つということが、大乗仏教が大乗仏教である所以だと言われていると思うんですけど。

 では、その思想的な根拠は何かというと、「無我」という言葉にあるように、「私」「あの人」「誰それ」みたいな境界線を実体化しない。「これは私のだから」とか「これはあの人のだから」というふうに、私たちは人を分断しがちですし、だから、自民族中心主義といったふうになりがちだと思います。でも、そもそも物というのは実体がない。人というのも実体がない。ただ、そういうふうに現れているだけである。

 しかも唯識などでは「阿頼耶識」ということを言います。阿頼耶識というのは、その人の歴史の中で、例えば洋ちゃんだったら洋ちゃんのお父さんやお母さんやその時代の人たち、洋ちゃんのお友達や日本という社会なんかの無限の語りというものがずっと続いていて、その語りの集積の中に洋ちゃんが生まれてきた。私の集積と洋ちゃんの集積とマイクの集積がちょっとずつ違うから、私が持ってる世界の語りと洋ちゃんが持ってる世界の語りが違う。それ(集積)を阿頼耶識というものだとすると、その阿頼耶識の中で私は生きてしまって、(そこで語られている)全部を実体化している。洋ちゃんも洋ちゃんの語りの集積の中で生きていて、その眼鏡で世界や人を実体化してしまっている。

 それが「空」である。実体のないものなんだと気づくと、何が起きるかというと、「世の中の人は全てそれぞれの語りを背負っている同じような人間なんだよな」ということ。で、(そうなると)たとえ人殺しであったとしても、嫌な奴であったとしても、それはその人のせいである以上に、その人をそういうふうに作ってきた語りがあったということでしょ。だからある意味、全ての人が「語りによって生かされている」とも言えるし、全ての人が「語りの犠牲者だ」とも言えるわけです。

 そういうところから、(同じように語りの中で重荷を背負っている)どんな人の苦しみも抜いていくと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
神話の「世界観」~日本と世界(1)踊りと物語
世界の神話の中で異彩を放つ日本神話の世界観
鎌田東二
学びとは何か、教養とは何か
教養の基本は「世界史」と「古典」
本村凌二
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照

人気の講義ランキングTOP10
「幸福とは何か」を考えてみよう(1)なぜ幸せになりたいのですか
「幸福」について語り合う「哲学カフェ」を再現
津崎良典
逆境に対峙する哲学(10)遺産を交換する
ナイチンゲールの怒りから学ぶこと…逆境の中で考えるとは
津崎良典
「進化」への誤解…本当は何か?(4)ダーウィンの進化論と自然淘汰の理論
『種の起源』…ダーウィンとウォレスの自然淘汰の理論
長谷川眞理子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
「徳」から生まれる「感謝の人間関係」
「徳」の本質とは「自己の最善を他者に尽くしきる」こと
田口佳史
歌舞伎はスゴイ(1)市川團十郎の何がスゴイか(前編)
市川團十郎の歴史…圧倒的才能の初代から六代目までの奮闘
堀口茉純
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏