逆境に対峙する哲学
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
武士道に学ぶ自己訓育――幻想としての順境に抗するために
逆境に対峙する哲学(3)修行・物語・語りの転換
世界という他者への希望的観測を抑止するために宗教は自己訓育を行い、武士は「武士道」を、ストア派は「災厄の予期」を実践してきた。それは、ありふれた現実である逆境に対する物語や語りの転換とも言える。われわれが逆境と捉えるのは、事柄や状況それ自体ではなく、それに対する思いであるからだ。(全10話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:16分10秒
収録日:2025年7月24日
追加日:2025年12月26日
≪全文≫

●希望的観測から離れるための「修行」


五十嵐 順境も逆境も幻想であって、世界は私とは関係のない原理により、私とは関係のないところで動いている、私とは関係のないもの、まさにカミである。私はそれを「どうこうできる」と思って操作しようとするんだけど、それは単なる思い込みで、できるときがあるかもしれないけど、ほぼできない。それが第三者から見た現実であるということですか。

板東 うん。

津崎 と同時に、さっきの繰り返しになるような気がするんだけれども、逆境こそが当たり前だというのは、結局24時間365日、実は大小さまざまな逆境の積み重ねである。そうすると、そのときに考えたいのが、逆境が当たり前で順境のほうが幻想だとした場合、僕たちは幻想のほうに引き寄せられて、そちらにばかり注目するわけだ。

 だからこそ、当たり前であるはずの逆境が、当たり前よろしく自分の前に立ちはだかってきたときに、それを忘却している私たちは、それゆえたじろいでしまうわけだよね。そうならないための備え、訓練、あるいは修行といったものは、東洋思想の中でどういうふうに考えられてきたんだろうか。あるいは仏教でもかまわないんだけれども。

板東 仏教の場合は、あらゆる修行が基本的に自己訓育というかたちで、希望的観測をやめるように(仕向ける)。どっちかというとそれはわれわれの意識よりは体にしみついているものだから、それを日常の行為とは違う仕方の「修行」というもので解除していくっていうことになるんでしょうかね。

 あと、『葉隠』や『武士道』だと、よく死のイメージトレーニングをしておけっていう。自分の家を「いってきます」と言って出ていくときに、多くの人はその後、夜には仕事から帰ってくると思っているが、そんな保証は当然どこにもない。だから、それっきり帰ってこない、家族とは永遠の別れになるというところまで毎日イメージトレーニングをしておけということが、武士道の中にはあります。われわれが幻想としての順境にすがりたくなることに抗するためのトレーニングをずっとやれ、というようなこともあるんじゃないでしょうか。


●災厄の予期と武士道に通じる「メメント・モリ」


津崎 今の話を聞いていて、私は東洋のことは専門家じゃないからまったく同じかどうかはなかなか言えないんだけれども、さっき少し具体的に話した古代ギリシア・ローマの...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
「幸福とは何か」を考えてみよう(1)なぜ幸せになりたいのですか
「幸福」について語り合う「哲学カフェ」を再現
津崎良典
逆境に対峙する哲学(10)遺産を交換する
ナイチンゲールの怒りから学ぶこと…逆境の中で考えるとは
津崎良典
「進化」への誤解…本当は何か?(4)ダーウィンの進化論と自然淘汰の理論
『種の起源』…ダーウィンとウォレスの自然淘汰の理論
長谷川眞理子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
「徳」から生まれる「感謝の人間関係」
「徳」の本質とは「自己の最善を他者に尽くしきる」こと
田口佳史
歌舞伎はスゴイ(1)市川團十郎の何がスゴイか(前編)
市川團十郎の歴史…圧倒的才能の初代から六代目までの奮闘
堀口茉純
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏