戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
昭和陸軍の派閥抗争には三つの要因があった
第2話へ進む
日英同盟の廃棄、総力戦…世界秩序の激変に翻弄された日本
戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか(1)総力戦時代の到来
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
日本陸軍は戦前の歴史をどう動かしたのか。シリーズでは陸軍の皇道派と統制派がどのような考えのもとに動いたかを論じる。第1話の今回はまず、第一次大戦が世界史的にいかなる意味を持ったかについて解説する。(全7話中第1話)
時間:10分11秒
収録日:2018年12月25日
追加日:2022年8月12日
≪全文≫

●第一次大戦後の世界は世界史的大変動の時期だった


―― 戦前、陸軍には皇道派と統制派と呼ばれる派閥がありましたが、そのような陸軍の分裂はなぜ起きたのでしょうか。

中西 これは現在の世界状況と非常にアナロジカルに似たところがあり、パラレルに論じられるところがあります。世界秩序という、大きな世界史的な視野から見ることが、昭和史の解釈としても非常に大事な視点になってくるわけです。これは私が常々提唱していますが、日本の昭和史だけが孤立して展開していったのではありません。もっと大きな与件もありました。昭和の中で日本最大の歴史、そしてあの悲劇の戦争に至る、大きな導入、あるいはそれを動かしていった動因には、当時が世界史の大変動期だったということがあります。

 具体的にいえば、それまで、第一次大戦までの世界を主導したイギリスを中心としたヨーロッパの国際秩序、つまりパックス・ブリタニカですが、数百年、少なく見てもフランス革命とナポレオン戦争後の1814~1815年に行われたウィーン会議から、100年間の世界を主導したイギリスによる世界秩序が、第一次大戦で見事に崩壊、あるいは衰滅したわけです。

 では次の覇権国はあったのかという話で、今日は世界史的な視野からいえば覇権争いや覇権の交代といった議論が人々の口によく上るような時代になりましたが、まさに100年前の第一次大戦から世界史的な大変動期だったのです。

 大体、20世紀の最初の20年、あるいは第一次大戦後の、いわゆる第二次大戦が始まるまでの戦間期といわれる時代は、明確な覇権国が存在しないままに世界秩序が根本的に流動を続けていった時代です。この端境期に昭和史がまともにぶつかるわけです。

 まさに日本はその激流の中に翻弄されていきました。パックス・ブリタニカの時代、つまり一つ前の時代には、明治日本は大変よく適合しました。その中での興隆というのは、申すまでもなく象徴的には日英同盟です。しかしそれは、1921年~22年に開かれたワシントン会議で廃棄されます。日本の羅針盤がここでなくなってしまったわけです。「日本外交の基軸」という言葉は、実に日露戦争後の明治40年前後に、日本の外交文書や政治家の国会答弁などで常套句になります。「基軸」という言葉を使うとどうも視野が狭窄してしまうので、現象としては、新しい時代になじめない証拠になってしまいます。

 日...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀
戦国大名の外交、その舞台裏(1)戦国大名という地域国家
戦国時代とは何か?意外と知らない戦国大名と国衆の関係
丸島和洋
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男

人気の講義ランキングTOP10
こどもと学ぶ戦争と平和(3)「小さな外交官」と少年兵の問題
外国が攻めてきたらどうすればいい?戦争と少年兵の問題
小原雅博
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
高市政権の進むべき道…可能性と課題(2)財政戦略3つの問題点
高市政権の財政政策の課題は…ポピュリズム政策をどうする?
島田晴雄
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
門田隆将
逆境に対峙する哲学(10)遺産を交換する
ナイチンゲールの怒りから学ぶこと…逆境の中で考えるとは
津崎良典
AI時代と人間の再定義(4)自分と出会うチャンス
プロセスこそが貴重…AIにない「自分と出会うチャンス」
中島隆博
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(4)新規事業成功のポイント
新規ビジネスの立ち上げ方、伸ばし方、見切り方の具体例
水野道訓
おもしろき『法華経』の世界(9)「如来寿量品」と三身論
仏の寿命は無量で久遠に実在する…「如来寿量品」の神秘
鎌田東二
地政学入門 ヨーロッパ編(10)グリーンランドと北極海
グリーンランドに米国の軍事拠点…北極圏の地政学的意味
小原雅博