戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
真の国際協調とは何か…統制派、条約派の危険性を見誤るな
戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか(7)昭和維新と歴史解釈の問題
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
政治と軍の関係でいえば、保身的な政治家や軍の指導者に対する若い佐官の強い焦燥感こそが歴史を動かしたと考えられる。陸軍と海軍との関係でも、陸軍の統制派に比べて海軍の条約派は良く描かれがちだが、これらも含めて、昭和史理解はまだまだ底が浅いといえる。(全7話中第7話)
時間:11分59秒
収録日:2018年12月25日
追加日:2022年9月23日
≪全文≫

●なぜ「昭和維新」という言葉が人々の希望になったのか


―― 陸軍と国内の政治情勢の関係では、政治に限界を感じた陸軍がわざと過激な行動で政府を追い込み、窮地に立たせたということはあるのでしょうか。

中西 それはまさに、満洲事変の構造がそうなのです。

 石原莞爾とか板垣征四郎といった、当時の関東軍を動かした中心人物の軍人たちが終始語っていたのは、東京の政府は必ず横やりを入れるはずだということです。彼らの中には日本の利権、つまり満洲における南満洲鉄道や日露戦争で得た利権を守るだけの勇気のある政治家はもはやいない。皆、政党政治家で保身に走るだけで、後は選挙で腐敗しきっていて財閥の走狗、飼い犬にすぎない。ということで、政治の堕落が根本にあったわけです。

 彼ら政党政治家たちは、そんな満洲利権に中国やアメリカが介入してきて、利権をみすみす奪い取られるような状況が起こっているのに何も手を打とうとしない。ここですよ。ここから全てが始まるのです。

 つまり、こういうことです、国家のかじ取りをすべき人たちが、当然のリスクを引き受けて大きな決断をして、そして文字通り指導者にふさわしい選択をする、この技量、この度量をなくしたとき、それでも普通の国ならそこで漂流していくわけですが、この国の中間層、あるいは下層の日本人でも、例えば幕末の志士、下級武士から国の大きな転換が起こったように、下から盛り上げていこうとする力が、逆に暴走につながるのです。これは昭和の悲劇だったと思います。

 ですから、昭和史は皇道派も統制派も両方ともそうです。軍の中枢部は陸軍大臣とか参謀総長といった人たちは、保身に走っている人ばかりです。あの当時の軍の最高指導部は無能を絵に描いたような人たちです。

 しかし、その一つ下、あるいは二つぐらい下の佐官、30代後半から40代にかけての中佐や少佐といった人たちの使命感の強さと、それと背中合わせの焦燥感、危機感の切迫性は、私の見るところ、満洲事変以前の時代に完全に一線を越えてしまっています。それほどの強い焦燥感がありました。

 幕末の志士たちが行った桜田門外の変などは、今でいえばテロともいえるようなものですが、しかし、それによって明治維新につながり、新たな国づくりへと進みました。その大日本帝国がそのまま昭和へと続いて、しかも明治日本を中心に大成功してきた国の形が...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子