岸信介と日本の戦前・戦後
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
東條英機と喧嘩…サイパン島陥落迫る日本と岸信介の覚悟
岸信介と日本の戦前・戦後(4)経済新体制と岸・東條の対立
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
満洲国での大規模な産業開発を指揮する経験を経て、大物とも渡り合う政治力を身につけた岸信介。しかしその後、商工次官や商工大臣を歴任するも、岸はその中でさまざまな挫折を経験することになる。満洲国から帰国した後の岸の歩みを振り返る。(全7話中第4話)
時間:10分58秒
収録日:2022年9月2日
追加日:2023年3月11日
≪全文≫

●経済体制の見直しに着手するも挫折を味わう商工次官時代


 さて、3年間の満洲生活を終えて岸信介が日本へ戻ってきたのが1939年のことでした。1939年、岸は商工次官になります。

 商工次官になった時に岸が取り組んだのは経済改革でした。具体的には、当時いわれた「経済新体制」というものを構築するのが商工次官としての岸の大きな任務でした。

 というのも、この時すでに日中戦争が始まっており、しかもそれが非常に長期化する雰囲気になっていました。そういう中で、いよいよ今後日本が総力戦を戦い抜けるような経済体制に再構築しなければいけないという圧力が強まっていたわけです。

 しかしながら、総力戦を戦うために経済新体制を作るということは、明治以来、日本がやってきた市場経済の基礎というものを根本から改造しなければいけません。そういう中で岸は、満洲でやってきた経験をもとに、今度は日本本土でより大規模に総力戦体制を耐え抜くための経済体制を作ろうとします。

 やったことはいろいろあるのですけれども、一番象徴的なものとしては産業別に「統制会」という経済団体を作らせます。統制会を作って、各企業が必要以上に利益や利潤を得ることをやめさせます。どれくらいの品物をどれくらいの量作るかについて、統制会のみんなで協議して、詳細な生産計画を作り、それで効率的な生産をやっていくということです。つまるところ、非常に効率的に大量生産を可能にすることで、長期的な戦争に勝ち抜ける経済体制を作ろうとしたわけです。

 ただ、ここまでくると、それはかなり社会主義的な経済計画を本格的に日本経済に導入するという考え方なのです。当然ながら、こういった改革をやろうとしたときに、政界であるとか、既存の財界との対立を生むことになります。

 当時(第2次)近衛内閣で、岸の上司に当たる商工大臣をやっていたのは小林一三という人物でした。小林は阪急東宝グループの創始者で、関西財界の大実力者です。この小林と岸が衝突することになります。小林はこうしたある種の経済計画を導入しようとする岸らに対して、赤の思想に基づいている、つまりは「共産主義者ではないのか」ということを匂わせることで、非常に批判をするわけです。

 結局、こうした中で岸は、1941年の初めに商工次官を辞任することになります。岸にとっ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
プーチンのロシア―その思想と戦略―(1)プーチン政治の特徴
ロシア皇帝のように悪者を叱る人…プーチンの思想と歴史観
山添博史
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ハーディングとトランプ~100年前の米大統領選を読む(1)米国第一主義の台頭
1920年のアメリカファースト…ハーディング大統領の勝利
東秀敏
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾

人気の講義ランキングTOP10
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(3)ヴァイキング招致説とキエフ・ルーシ
ロシアの起源はヴァイキング?…キエフ・ルーシの興亡と、ロシアとウクライナの決定的な「歴史的溝」
上月豊久
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(14)ポリスと魂の堕落過程〈下〉僭主の末路
僭主制は欲望の奴隷…過度の自由が過度の隷属に転換する
納富信留
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(3)国司と郡司のつきあい
郡司の妻たちと宴会!?……国司・大原真人今城へのはなむけの歌に記された「媚態表現」の真相と人心掌握術
上野誠
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(5)サルコペニア・フレイル対策
認知症予防にはどんな食事がいいのか?鍵はビタミンDの充足
小川純人
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
「発想力」の技法を学ぶ(1)発見と探究(前編)
“なぜ”を繰り返せ!『発想力の全技法』に学ぶ原因探究法
三谷宏治