岸信介と日本の戦前・戦後
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
左遷をバネに勇躍する岸信介、その成長の契機に迫る
岸信介と日本の戦前・戦後(3)満洲への「左遷」
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
商工省で統制経済の知見を深めていた岸信介だが、官僚時代のキャリアにおいて大きな転機となったのは、満洲への「左遷」だった。近年の研究を参照すると、満洲での功績として挙げられる「満洲産業開発五カ年計画」の内実は、これまでの解釈とはやや異なっているようだ。しかし、その後の政治指導者としての成長につながる契機となったのもこの満洲行きだった。では実際に、岸は満洲でどのようなことを行ったのか。その実態に迫る。(全7話中第3話)
時間:8分07秒
収録日:2022年9月2日
追加日:2023年3月4日
≪全文≫

●岸にとって転機となった満洲への「左遷」


 しかしながら、ここで岸信介にとっての大きな転換点になったのは、満洲へ行くことになったということです。

 満洲というのは、満洲事変の後で関東軍が作った傀儡政権でした。軍主導で経済開発計画を立てて発展させようとしたのですけれども、それが行き詰まっていました。そういう中で関東軍が新しい経済開発計画を立案していたのですけれども、それをしっかり実行してくれるような優秀な人材を各官庁に来てもらいたいと働きかけていたわけです。

 岸は工務局長の後で一旦日本を離れて、満洲へ渡って、実業部次長というポストに就きます。これは事実上、満洲という一国の産業、行政の指揮をするという非常に重い役職であったわけです。

 面白いのは、しばしば岸が戦後に語っている記録を見ていると、あたかも自分から手を挙げて満洲へ行ったというようなことを書いていることです。しかしながら、近年の研究や当時の記録を見てみると、必ずしもそうではないところがあるのではないのか。つまりは、満洲に自ら望んで行って、満洲をしっかり育てたという岸の語りは、少し自己正当化しているところがあって、実際にはちょっと違ったのではないか。

 当時の商工省の状況を詳しく見てみると、実は当時の商工大臣と、前回お話しした省内での吉野・岸ラインは折り合いが良くなかったのです。つまりは、吉野と岸が結局同時に左遷されてしまい、岸は満洲に送られたというのが、実は当時の実態であったといわれています。


●満洲の開発計画をお膳立てした椎名悦三郎


 満洲での岸の活動を考える上で大変重要なのは、彼の商工省で3年後輩であった椎名悦三郎という人です。

 後に椎名もまた自民党の政治家になって、1970年代に「椎名裁定」という、三木武夫政権を選ぶ時に非常に重要な役割を果たした政治家ですけれども、この椎名という人が実は岸よりも早くに満洲に送り込まれていました。岸が満洲にいた期間はおおよそ3年くらいですけれども、椎名は5年半、満洲にいたのです。

 椎名が満洲でやったことは何かというと、大規模な予算をつけさせて、満洲の資源とか、農林水産業のような実態調査をやらせるということで、基本的には満洲の経済計画のお膳立てはほとんど椎名を中心にやられていたのです。

 岸が満洲にやって...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
プーチンのロシア―その思想と戦略―(1)プーチン政治の特徴
ロシア皇帝のように悪者を叱る人…プーチンの思想と歴史観
山添博史
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
小原雅博
米国派経済学の礎…ハミルトンとクレイ(1)ハミルトンの経済プログラム
フェデラリスト・ハミルトンの経済プログラム「4つの柱」
東秀敏
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
編集部ラジオ2026(27)昭和の名将・根本博
【10min解説】根本博…戦後の内蒙古での激闘と台湾での義戦
テンミニッツ・アカデミー編集部
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(1)危機の台湾への密航
「国共内戦」危機の台湾…根本博の密航と涙で迎えた中国人将軍
門田隆将
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(3)稲作社会と頑張る日本人
ダメなのは「頑張りが足らない」から…うつを招く稲作的発想
與那覇潤
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
昭和の名将・根本博…内蒙古・終戦後の戦い(4)決断のかげにあった深い葛藤
情報を基にいかに決断するか…その深い葛藤と「南泉猫を斬る」
門田隆将
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(4)5人の皇帝と現代中国
特筆すべき5人の皇帝…中国史を知らなければ現代中国もわからない
宮脇淳子
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤