岸信介と日本の戦前・戦後
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
自由党への葛藤と決断――政治家・岸にとって最大の転換点
岸信介と日本の戦前・戦後(5)国民運動の挫折と自由党入党
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
日本の将来を見据えてあるべき政治体制を模索してきた岸信介は、戦時中から政治活動の基盤となる組織形成に尽力していた。しかし、戦後、A級戦犯処分を受け、不起訴で釈放となるもしばらく隠遁生活を送ることになる。その後、国民運動を企図し、「日本再建連盟」を立ち上げるが挫折。そうした中、政治家・岸にとって最大の転換点となったのが自由党入党の決断である。そこにはどんな想いがあったのか。戦争末期から国会議員に復帰する1953年までの流れを追いながら解説する。(全7話中第5話)
時間:13分57秒
収録日:2022年9月2日
追加日:2023年3月18日
≪全文≫

●戦後を見据えて政治組織の立ち上げに力を注ぐ


 さて、こうした形で東條政権を潰し、岸信介自身もまた下野することになるのですけれども、岸ののちの政治家としての障害を考えた時に重要だったのは、彼が1942年の翼賛選挙に出馬して当選しているということです。彼は現職の商工大臣のまま代議士になったのです。ただ、この後、軍需省に分かれた時に岸が軍需次官に格下げになるのですけれども、次官というのは、大臣はできるが政治家と兼任できないのです。なので、そのために代議士を辞職することになったわけです。

 ただ、面白いのは、官僚や軍人が政治を全部動かしていくような時代は長続きしないのではないかということを、岸がこの頃から考え始めていたことです。つまり、何らかの形で国民と直接接点を持った政治組織をちゃんと立ち上げなければいけないのだということを、岸は戦争中に早くも考え始めていたわけです。

 岸の興味深いところは、戦争中から何度も、新しい政党であるとか党組織のようなものを作ろうとしている点なのです。

 国務大臣を辞めた後で、岸は山口県に戻るのですけれども、山口県で地元の人々と語らって、「防長尊攘同志会」という新たな政治団体を作っています。さらに太平洋戦争末期の1945年3月になると、今度は「護国同志会」という組織を国会の中で立ち上げています。岸は、表向きは指導者にならなかったのですけれども、実は裏で実質的なリーダーをしていたといわれています。

 戦争というものがどういう形で終わるかということはまだこの時、岸はよく分かっていませんでした。しかしながら、戦争中からもう戦後というものを見据えて、政治活動を行うための組織をこの頃から作ろうとしていたわけです。

 これは、岸の戦後の政治活動を考える上でも非常に興味深かったし、こういう政界との付き合いができる中で、後の1950年代に岸が自民党の中で有力な政治指導者として出てきて、首相になる中で彼を助けた側近の政治家たちと知り合っているのです。

 例えば、川島正次郎という、岸信介の下で幹事長を務めた有力な党人派の政治家ですけれども、川島は戦争中に岸と知り合ったといわれています。


●A級戦犯処分から不起訴で釈放、葛藤の隠遁生活へ


 しかしながら、岸にとって大きな計算違いとなったのは、日本が敗戦した後、彼は東條政権の閣僚であって、戦争を遂行した...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(1)お金の機能とその要件
お金の「3大機能」とは何か? そしてお金のルーツとは?
養田功一郎
政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(1)二人の思想家
モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?
川出良枝
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(39)上野誠先生の万葉集講義と現代
【10min解説】万葉集に学ぶ「公務員倫理法」の大失敗?
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(6)ピョートル大帝の宗教改革
王座に乗った革命家・ピョートル大帝の「宗教改革」と、ソビエト時代のロシア正教の「弾圧」と「利用」の実情
上月豊久
「良き対話」とは?――哲学から考える(1)対話とは何か――会話・説教との違い
「良き対話」のヒントを哲学から考える…「対話」の大前提とは、そして「会話」「説教」「場回し」とは何が違うのか?
納富信留
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
『源氏物語』を味わう(3)形容詞からの楽しみ方
美しい形容詞の使い分け…『源氏物語』の表現を味わう
林望
「満洲」から考える日本とアジア(9)アヘンの実態と満洲開発
満洲国の開発とアヘン問題…アヘンが資金源となったのは事実だが「同時代の世界」と比較せねば真実はつかめない
宮脇淳子
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(1)国守・大伴家持と地方社会の日常
『万葉集』でわかる奈良時代の貴族と地方豪族の関係と日常…歌人・大伴家持の歌に秘められた国守時代の苦労話
上野誠