岸信介と日本の戦前・戦後
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
60年安保、米中との関係からみた岸信介の神話化
岸信介と日本の戦前・戦後(7)時代が求めた岸信介
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
経済政策の改革を求める時代のニーズに応える存在として台頭してきた岸信介だが、外交や安全保障に対してはどのような姿勢を取っていたのか。シリーズを通して解説してきた岸の人物像や政策ビジョンの一貫性をさらに深掘りして、政治家・岸の手腕を徹底検証するとともに、その歴史的意味を考える。(全7話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)・川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:20分25秒
収録日:2022年9月2日
追加日:2023年4月1日
≪全文≫

●戦前の経済政策と吉田茂の日米協調路線が融合した戦後日本


―― 岸信介が復活してきたことは、やはり時代の要請なのですね。

井上 そういう方向だと思います。政治の世界においては、例えば、吉田派と反吉田派という対立がよくいわれると思います。あるいは党人派と官僚派であるとか、戦前派の人と戦後派など、いろいろな括り方をされると思うのですけれども、やはり1つの定義だけで括ることはできないわけです。だから岸とその周りの人たちが戦後世界で台頭してくる上では、やはり経済政策、産業政策に非常に精通しています。おそらくそういったものが、むしろ革新勢力のほうが強いと思われていたところで、戦争中にそういう経験を持った政治家が保守の側にもいるのだということを示せたところは大きかったのだと思います。

 もっというと、戦後世界では、アメリカの経済システムの中に組み込まれていきながら、非常に日本経済は発展していくわけです。吉田茂という人は、いわゆる英米との協調を非常に重視していました。これはどちらかといえば、アメリカとの開戦詔書に署名して、アジア主義を信奉している岸とは違う考え方だと思うのです。しかし、戦後世界になった時に面白いのは、吉田の掲げる日米協調の精神のようなものと、経済政策はいわゆる戦前期、1930年代からのものを連続させていくという思想が融合してくることです。

 だから、政治の世界ではいろいろな路線対立はあるのですけれども、結局、戦後日本では、戦前期にあったいろいろなものが集まって、また選び取っていったのだろうと思います。


●清濁合わせ呑む人間性ゆえの「妖怪性」


―― 先生がおっしゃった、いわゆる岸の「妖怪性」ですが、これは実像がみんなに明らかになっていないからではないかというお話がありました。確かに時代の移り変わりの中で、例えば東大の時には北一輝に惹かれるようなものがあったり、おそらくそこからの延長線上で小林一三と商工省が対立した時にはアカ呼ばわりもされていたりということですから、当然オールドタイプの自由主義者から見れば、やはり妖怪性というか、こいつは何を考えているか分からないというのもあったのでしょう。あるいは満洲時代の話でも、もちろん計画経済の話と同時に、巷間言われるところですと、アヘンの裏金が云々などという話が出てきたりします。

 このあたりのことは同時代の方か...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏