岸信介と日本の戦前・戦後
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なぜ岸信介は戦後世界で復活できたのか?貫戦史でみる意味
岸信介と日本の戦前・戦後(6)貫戦史からみる岸信介
井上正也(慶應義塾大学法学部教授)
1953年に自由党から国会議員となった岸信介は、その4年後には内閣総理大臣に就任する。今では考えられないその足取りの速さの背景には、戦前から知見を蓄えていた計画経済の担い手としての期待があった。その後、強力な党体制を築く目論見は成就しなかったが、岸の政策ビジョンが戦争を跨いで連続性を持っていたことを「貫戦史」の視点から明らかにする。(全7話中第6話)
時間:18分22秒
収録日:2022年9月2日
追加日:2023年3月25日
≪全文≫

●議席獲得からわずか4年で総理大臣にまで上り詰めた


 1953年に自由党に入党した岸信介なのですけれども、ここから急速に保守の政界の中で頭角を現していくことになります。

 ある種、戦後政治史のおさらいのような話になるのですけれども、鳩山一郎の一派が自由党を離党して民主党という党を作ります。その時に岸も行動をともにして、民主党の初代幹事長になります。

 さらにその後で、1955年に自由党と民主党が保守合同という形で合併して、自由民主党という党が結成されます。いわゆる保守合同の中で岸は、引き続き自民党の初代幹事長になるわけです。この後、石橋湛山政権ができた時に外務大臣になって、石橋が病気で退陣した後に、1957年に首相に就任します。

 ここまでの履歴を見ると本当に急速で、1953年に議席を得た人が1957年に総理大臣になるということは今ではまずあり得ません。政界に復帰してたった4年で首相に上り詰めたわけです。

 どうして岸が急速に政治の世界で台頭できたのでしょうか。もっというと戦争、あるいは敗戦とA級戦犯での収監をはさんで、不死鳥のように復活したのはなぜなのかというところです。

 1つには、やはり岸自身の能力と運というのもあると思います。非常に運があって、度胸がいい。喧嘩をするときは喧嘩できるし、決断するときにさっと決断ができるというのが、単なる優等生的な官僚ではなかったのです。


●計画経済導入を求める時代のニーズに合致した岸の手腕


 ただ、このシリーズのお話の1つの大きなテーマでもあると思うのですけれども、経済と政治の双方で岸が持っていたビジョンが時代に適合していたということが大きかったのだろうと思います。

 経済のお話からさせてもらうと、戦争を通じて統制経済という動きが大幅に強化されたのです。最終的には戦争に負けてしまうわけですけれども、ただ統制経済を通じて国家と経済、社会の関係が、第2次世界大戦の期間で大きく変化しました。占領期に総理大臣を長く務めた吉田茂は、非常に統制が嫌いで、経済計画も大嫌いというタイプの人でした。

 ところが、アメリカの占領が終わると徐々に吉田政権も政治基盤が弱まってきます。同時に批判されるようになったのは、日本が経済的に復興するためには自由放任の経済だけでは限界があるということです。つまり、か...

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