小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
吉本隆明の思想を凝縮した敗戦時20歳の回想「戦争と世代」
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(4)純粋戦中世代の葛藤―吉本隆明の「起点」
浜崎洋介(文芸批評家/ 京都大学経営管理大学院特定准教授)
「戦後最大の思想家」ともいわれる吉本隆明について考える第4話。伝統を重視する小林秀雄を保守と捉えるならば、吉本隆明は新左翼を肯定する左派のイメージが強いが、実際は異なる。そこで、まずは純粋戦中世代である吉本隆明の遍歴時代をたどりながら、その後の思想的背景を理解していきたい。(全7話中第4話)
時間:13分51秒
収録日:2023年4月7日
追加日:2023年9月5日
≪全文≫

●国体思想の崩壊と価値観の逆転に苦悩する世代


 こんにちは。文芸批評家の浜崎洋介です。小林秀雄と吉本隆明の話をずっと続けてきているわけですが、今日は第4回目ということになります。「純粋戦中世代の葛藤」と題して、吉本隆明という人間がどこから思考を始めたのかということを見ておきたいと思います。

 小林秀雄はまさに前近代と近代、その狭間の葛藤を、彼自身はそれを引き受けて、それをどのように調整すればいいのか、それはまさしく日本人の自然、日本人の直観、それに基づいて自分たちの必要と不必要、それを区別していくということだった、と言ったのだとすれば、吉本隆明も似たようなもので、つまりは戦前と戦後のいらないものをまさに排除して、そして自分の中にそれでも残ったものをつなげて、戦前と戦後を生きようという意見を言った人間です。

 と同時に、「純粋戦中世代」と先ほど言いましたが、ここが重要なのです。純粋戦中世代とは何かというと、まさに昭和元年ほどに、あるいは大正の末期に生まれて、そして少国民教育というべきか、つまりは、お前たちは戦争に行くのだという教育をされて、思春期の10年間をほぼあの戦争の中(日中戦争の中、あるいは大東亜戦争、太平洋戦争の中)で生きたという人間なのです。

 ということは、自分たちはいつか死ぬんだということを覚悟させられた世代であり、そのことによって初めて自分がどう死ぬのかということも自分でよく考えた、あるいは自分でどう納得しようかということで葛藤した、そういう世代なのです。

 それがいきなり、1945年の8月14日にポツダム宣言を受諾して、翌15日に天皇による玉音放送があるのです。これによって一気に世界が反転するのです。死ぬべきだったはずの自分が生き残る。あるいは、永遠だと考えられていた天皇、永遠だと考えられていた国体、それが音を立てて崩れていく。そんな体験をした、そういう世代だと考えていただければいいのではないかと思います。

 実際、被災というか、被害ですが、戦争の被害だけを考えてもものすごく膨大なものでした。日本近代史においても、これしかないというような被害だったといっていいでしょう。軍人・軍属の死亡・行方不明者は186万人といわれています。一般国民の死亡・行方不明者は66万人。罹災家屋においては236万戸、罹災者は875...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
プラトンの哲学を読む(1)対話篇という形式の哲学
ヨーロッパ哲学の伝統はプラトン哲学の脚注だ
納富信留
「徳」から生まれる「感謝の人間関係」
「徳」の本質とは「自己の最善を他者に尽くしきる」こと
田口佳史
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
三日坊主、部屋が片付かない…なぜできないか行動分析学で考える
島宗理
「幸福とは何か」を考えてみよう(1)なぜ幸せになりたいのですか
「幸福」について語り合う「哲学カフェ」を再現
津崎良典
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
ムハンマドを知る(1)その役割と人物像
ムハンマドは神の啓示を受けた預言者で共同体の最高指導者
山内昌之

人気の講義ランキングTOP10
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
飽食時代の「選食」のススメ(1)選食の提唱と「食の多様性」
肥満、認知症、低栄養…飽食の時代に大事な「選食力」3カ条
堀江重郎
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(8)AI時代の人間の価値
労働市場改革を妨げる労組や、不登校を救えぬ文科省こそが邪魔だ
宮本弘曉
ウェルビーイングを高めるDE&I(6)エクイティ実現と特権性の理解:前編
改札、公衆トイレ、在宅勤務…構造的格差とエクイティの意味
青島未佳
編集部ラジオ2026(17)「過剰な良かれ」の落とし穴
【10minで考える】巨人・阿部監督の辞任と「過剰な良かれ」
テンミニッツ・アカデミー編集部
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(2)失敗の本質
『失敗の本質』初版から30年…同じ失敗を繰り返す日本組織
三谷宏治
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
睡眠不足が生活習慣病や精神疾患を招く…睡眠の5つのミッション
西野精治
不便益システムデザインの魅力と可能性(1)「便利・不便」「益・害」の関係
「不便益」とは何か――便利の弊害、不便の安心
川上浩司
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫