小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
小林秀雄“最後の弟子”福田恆存の言葉と日本人の「自然」
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(7)改めて問われる、日本人の「自然」
浜崎洋介(文芸批評家/ 京都大学経営管理大学院特定准教授)
小林秀雄が「伝統」と「直感」、吉本隆明が「大衆の原像」と「対幻想」という言葉でそれぞれ論考している“日本人の「自然」”。戦前・戦後を越え、昭和から平成へと向かう中、ニーチェから始まるポスト・モダニズムが堕落し、2000年代以降、ネオリベラリズムとグローバリズムの跋扈と生活世界の溶解が進む昨今、小林秀雄と吉本隆明の思想を再検討する意味は大きい。シリーズ最終話の今回は、柄谷行人、東浩紀、福田和也という3人の批評家を取り上げながら、小林秀雄が「最後の弟子だ」と言った福田恆存の言葉を引いて講義を締めくくる。(全7話中第7話)
時間:14分22秒
収録日:2023年4月7日
追加日:2023年9月26日
≪全文≫

●個人の生き方の根拠こそ「歴史的包括」である


 皆さん、こんにちは。文芸批評家の浜崎洋介です。

 小林秀雄と吉本隆明をめぐる講義、これもこの回で最後ということになります。今回は「改めて問われる、日本人の自然」と題しました。

 前回は相当絶望的な状況というか、絶望的な話をしましたが、それに対して私たちは何ができるのか、そしてその状況は今どうなっているのか、それを改めて見届けることで、次の一歩をどう歩み出せるのかといった議論を、今日はできればいいと思っています。

 まずは確認しておきたいのですが、前回、江藤淳の引用の部分で「包括的な歴史観」ということを言いました。抽象的な言葉ですから、少しだけ解説をしたのちに、すぐに話に入りたいと思います。

 つまり、これがないと私たちは自信が持てないのです。もう少し言います。これは私自身の個人的な人生の問題とかぶせていいと思います。要するに、私自身がどうやって生きてきたのか。例えば、幼稚園児に自信があるか。たぶんないでしょう。中学生、高校生にあるか。これもないでしょう。つまり経験値自体がないからです。右往左往しているということが関の山でしょう。それ自体は別にいいのです。しかもそれが思春期の意味ですから。

 しかし、それによって右往左往して、「あっちに行ってダメ、こっちに行ってダメ」で、そして「私の中点はここ」で、「私の生きる道はここだ」ということがだんだんはっきりしてくるのです。これがだいたい30歳とか、35歳とか、そのあたりかもしれませんが、そこまでの間の記憶が私の中にあります。ということは、やはり私の中に包括的な自分の生きてきた枠組みがあるということです。その枠組みを持っているがゆえに、私自身は、だから「こっちに進むのだ。自分の生き方はこれなのだ」と決めることができるのです。

 しかし、この包括的な歴史観がなくて、今、今、今の断片性しかなかったとき、私は40歳を過ぎても、あるいは50歳を過ぎても、いまだにどちらの方向に行けばいいのかが分からない、そういった不安に駆られるはずです。

 私は1回きりの人生しか生きていません。ということは、実のところ、最終的に利害得失を超えているような生存を生きているわけです。利害得失を超え、これだから、こちらの方向を選ぶがゆえに、ある充実...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
柿埜真吾
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味
『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神
ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか
早坂隆