ソフトな歴史学のすすめ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
歌の始まりも言葉の交換から――互酬性と信頼のネットワーク
ソフトな歴史学のすすめ(4)交換によるネットワークの構築
上野誠(國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)/奈良大学 名誉教授)
人間にはそもそも互酬性があり、それがネットワークの構築、信頼の形成に大きく影響している。『古事記』によると歌は言葉の交換から始まっており、そこからもうかがえることである。今回は祖母のエピソードを中心に、交換によってネットワークを築いていった人間の歴史について語る。(全5話中4話)
時間:10分55秒
収録日:2021年6月4日
追加日:2021年11月1日
≪全文≫

●小農耕と互酬性と人的ネットワーク


 実は人間社会にはこの互酬性があるので、たとえミョウガの5本でも贈ったら、翌日にはおまんじゅうが届くわけです。おまんじゅうをもらったら、今度はミョウガ以外の、例えばお花などを持っていかなければいけない。そうしている間に、きくのおばあさん(祖母)はご近所中の人気者とは言いませんが、「ものをくれるおばあちゃん」ということになり、いろいろなものが家に届き出すのです。

 春になると、土手に行ってツクシを摘みます。ツクシを摘んで、ハカマを取って、時間をかけてうまく煮ると、ちょっとした苦みがあるので、おいしい佃煮になります。しかも、どのくらいの背丈のときが一番おいしいかが分かると、その背丈のときに摘むので、「おばあちゃんの作ったツクシの佃煮はおいしい」と言われる。

 すると、今度はどういうことが起こるか。「おばあちゃん、ツクシを摘んできたから煮て」ということになって、ツクシが届くようになるのです。そうこうしている間に、田舎の人なので、梅干しを漬けたりするわけです。うまく漬けると、塩辛いものや、少し薄塩のものなど、何種類かの梅干しができる。すると今度は、「おばあちゃん、梅干し漬けるのがうまいのね。うちの庭には梅の木があって……」と、今度は梅の実が届くようになる。

 そうすると1年中、「ツクシが採れました」「梅が採れました」などと言って、先方が持ってくる。こちらは漬けたものの一部を相手に渡す。そうしている間に、「私も漬けてみたい」という人が現れ、家で梅干し漬け教室や佃煮の煮方教室が行われ出す。

 これを考えてみると、いわゆる「原始農耕」「小農耕」が庭で始まり、採れた産物を人に渡すことによって、相手からまた物が届くようになる。そのことによって人間のネットワークができて、今度は技術の移動が行われるようになっていく。つまり、最初は小さな猫の額ほどの場所で行われた農耕なのだけれども、ものをやりとりしている間に、人的なネットワークが生まれてくる、ということになるわけです。


●ものの広がりは、その地域のネットワークを表す


 そこで考えてみてほしいのですが、「これ、佃煮です」と言って持ってきたとしても、信頼がなければ食べません。毒が入っているかもしれないのです。つまり、ものの移動というものは、信頼がないと行われないのです。

 だから基本...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編(1)キスカ島撤退作戦
5200人の将兵を救え…米軍も称賛した「キスカ島撤退作戦」の奇跡
門田隆将
徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論(1)率先し陣頭指揮する
徳川家康の「天下泰平」デザインとは?…陣頭指揮とカリスマ性
片山杜秀
戦史に見る意思決定プロセス~日本海軍の決断(1)日本海海戦・東郷平八郎
なぜ東郷平八郎はバルチック艦隊を対馬で迎え撃ったのか?
山下万喜
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子

人気の講義ランキングTOP10
日本の財政の真実を検証する(2)なぜ財政危機は起きていないか
なぜ財政危機は起きていないのか…国債の金利のトリックを読み解く
宮本弘曉
老子の神髄(4)生成化育と突破力
生成化育――「自ずと然り」のメッセージと「突破する力」の歓喜
田口佳史
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(6)リベラルアーツの本質
自分にしかできない自分の世界を味わうために、他の人とつながる
橋爪大三郎
ウェルビーイングを高めるDE&I(6)エクイティ実現と特権性の理解:前編
改札、公衆トイレ、在宅勤務…構造的格差とエクイティの意味
青島未佳
ラカンの精神分析~心の謎を解き明かす(7)ベイトソンの学習理論とコンテクスト
ダブルバインドとは?ベイトソンの学習理論から解き明かす
斎藤環
印象派の解体と最後の印象派展(1)セザンヌと印象派
印象派の画家に大きな影響を与えたセザンヌの構築的筆触
安井裕雄
ポスト国連と憲法9条・安保(4)自衛隊と憲法改正の問題
「憲法9条に自衛隊を書き込む」という改憲案は「姑息」
橋爪大三郎