「三国志」の世界とその魅力
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
黄巾の乱…張角が掲げた16文字のスローガンの意味
第2話へ進む
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
渡邉義浩(早稲田大学常任理事・文学学術院教授)
中国の3世紀を舞台とする「三国志」は、今なお日本人の間でも世代を問わず人気を集めている。群雄が割拠する時代の攻防史として、1800年以上語り継がれてきた「三国志」の世界の魅力を、早稲田大学文学学術院教授の渡邊義浩氏が伝える。(全6話中第1話)
時間:11分25秒
収録日:2017年11月10日
追加日:2018年1月25日
カテゴリー:
≪全文≫

●「三国志」の舞台となる三国時代とはどんな時代か


 こんにちは。私、早稲田大学文学学術院教授の渡邊義浩と申します。今回は「三国志」の基本的な概略を話していきたいと思います。まず、三国時代は3世紀の中国のことですが、それはどんな時代だったのかを、ご説明したいと思います。

 最初に「前漢」・「後漢」という国家が出ていますが、これは「漢字」や「漢民族」という言葉の語源となっている、中国を代表する古典的な国家です。ただ、漢の支配は400年も続いたため、すでに限界が訪れていて、時代が大きく変わろうとしていたわけです。

 具体的には、後漢末期に起こる「黄巾の乱」から戦乱の世が始まり、その中で三国時代への移行があるわけですが、その際に二つの大きな戦いがありました。

 一つが「官渡の戦い」という200年の戦いで、このときに袁紹(エンショウ)を破ったのが曹操(ソウソウ)という人です。曹操が基本を築いていくのが「魏」という国家になります。しかし、曹操が中国を統一しようとしていた208年に「赤壁の戦い」が起こり、曹操は敗れていきます。曹操を破った主力となった孫権(ソンケン)の建てた国家が「呉」、劉備(リュウビ)の建てた国家が「蜀」ということになります。

 こうして220年以降、魏・呉・蜀の三国が並び立っていく「三国時代」へと移っていくわけです。


●『三国志』時代の中国を地図で見る


 三国時代は、地図で見ていただくと、魏・呉・蜀がだいたい1:1:1ぐらいの大きさで存在しているように見えます。しかし、古代中国では、ここ(魏)に流れている黄河の流域、いわゆる「華北」が生産の中心でした。こちら側(呉・蜀)の長江の方が発展していくのは、三国時代より後のことです。

 三国時代に先立つ後漢という中国王朝は13の州から成っていました。それで配分すると、9(魏):3(呉):1(蜀)ぐらいの比率になります。それがもともとの国力のあり方だと考えていただいていいと思います。したがって、魏が優勢であることは圧倒的に明らかであり、呉と蜀が手を結んで魏と戦っていく。これが、三国時代の基本的な形となっていきます。

 しかしながら、魏や呉や蜀が三国を統一できたわけではなく、三国を統一していくのは、魏から出てくる「晋」(西晋)です。これは、諸葛亮(ショカツリョウ)と激しく戦った司馬懿 (シバイ)の孫、司馬炎 (シバエン)...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史