中国近代化の真実~科挙と日清戦争
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「エリート官僚・科挙」と「低い識字率の庶民」という矛盾
中国近代化の真実~科挙と日清戦争(1)ピンインと科挙
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
四声と発音は、中国語の第一関門。それを表す記号に島田晴雄氏は注目した。漢字の読みをアルファベットで記す「ピンイン」はわずか100年の歴史。その裏には近代西洋文明と遭遇した中国の深い悩みが隠されていた。(前編)
時間:13分57秒
収録日:2014年3月4日
追加日:2014年5月1日
≪全文≫

●中国語を学び始めて中国のあり方が見えてきた


この話を聞いている皆さんの中には、中国の専門家の方や言語を教えている方もいると思います。そういう大先輩の皆様には恥ずかしいのですが、今日は71歳の中国語初学者として、あくまでも素人の見解を話そうとしています。そもそも私が中国語を学ぼうとしたのは、最も重要な隣国とのコミュニケーションができないのは、いわゆる知識人としてはまずいだろうという思いからでした。ところが中国語を学び出すと、いろいろな重要事に気づきました。言葉というよりも中国のあり方そのものに深く関わることです。そのことを2回に分けて申し上げて、私の感想にしたいと思います。
前回、中国語には四声(スーシェン)があるので、1千~2千語の中国の漢字が、1万数千種類もの意味の言葉になると言いました。この四声を区別するために、第二声から第四声にアガル・サガルの音のカーブを示す「声調符号」がつけられます。でも、それが使われるようになったのは、たかだか70年前です。また、言葉の読み方自体はアルファベットで習うのです。
たとえば今の習近平主席を中国では「シージンピン」と言いますが、「シー」は「XI」と書きます。「なぜXIがシーなのか。アルファベット読みならクシーなどになるのではないか?」と思いますが、これも慣例的なもので、成立したのは100年少し前、清朝の終わり頃です。

●近代化をはばんだ「中国語問題」とピンイン運動


この頃、中国の外交官が、フランスではアカデミーを作って、厳格に言葉をコントロールしている状況にふれて、大変なショックを受けました。ひるがえって自国を顧みれば、中国人同士の間では互いの発音さえ通じていない。漢字は読めない人が大半である。つまり、漢字が読めないから、言葉がしゃべれない。文字を仲立ちにしないから、発音の規準が定まらないわけです。
では日常のコミュニケーションはどうしたのかというと、母親から子どもへと伝えられてきた土地の言葉です。「ネー」とか「マー」とかいうのを口伝えで覚えていく。子供が生まれたときには、中国でも「マンマー」と言いますから、ずっとそれでいきます。教育を受けない人たちは、生まれた村の中で田畑を耕しながら土地の言葉で生活して、老人になって、やはりその村の中で死んでいく。隣の村に行ったら、言葉はもう通用しません。
これでは近代化はとて...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦