ロシアのウクライナ侵攻と中国、イラン
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イランを米国へのジャブの当て馬に…中国の中東戦略とは?
ロシアのウクライナ侵攻と中国、イラン(3)中国の中東戦略
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
中国は、アジア最大の軍事超大国であり、アメリカ軍は「中国は2027年までに台湾に侵攻する能力を名実ともに持つ」と警鐘を鳴らしている。その中国が、アメリカにジャブを打つために使おうとしているのがイランである。いざ台湾侵攻のときに、中東でイランに事を起こしてもらって、アメリカ空母機動部隊をくぎづけにしようと、もくろんでいるのだ。さらに中東におけるアメリカの同盟国にも、たくみな浸透工作を行なっている。そしてそれは中東の核戦争の危機を高めかねないものだという。(全5話中第3話)
時間:12分03秒
収録日:2022年2月15日
追加日:2022年3月13日
≪全文≫

●アメリカの空母機動部隊をペルシャ湾にくぎづけに


 皆さん、こんにちは。さて、(前回は)中東におけるロシア、イラン、アメリカとの関わりについて触れましたが、その際、中国についても触れました。

 中国は、もう誰もが見知っているように、世界的な規模において大規模な軍拡(軍備の拡大)を行なっています。数だけでいえばアジア最大の空軍、そして世界で最大規模の陸軍を持っており、また、艦船の数においては世界最大になっている海軍を保有している、軍事超大国であることは間違いありません。

 アメリカのインド太平洋海軍司令長官は、「2027年までに中国は台湾の侵攻に成功する能力を名実ともに持つ」と警鐘を鳴らしいます。そしてアメリカ国防総省は、台湾侵攻の最大の機会はいつか、という問いを発したうえで、中国の軍事力がピークに達し、かつアメリカがまだ中国のピークに達することができない期間は、2025年から2030年の間の5年間だといっています。この2025年から2030年の間こそが、中国の台湾侵攻の危機ではないかという見立てを、米軍の海軍司令長官が述べているわけです。

 一方において、イランとの関係についていえば、中国は台湾有事となった場合に(これは究極的に戦争ということになるわけですが)、イランと、湾岸におけるイランの代理勢力が、中東における各国の石油天然ガスを中心とした海運システム(海上運輸)を脅かし、そしてできればペルシャ湾地域にアメリカの複数の空母機動部隊(戦前の日本風にいうならば「航空艦隊」ということになりますが)をくぎづけにしてもらいたい。

 (アメリカの空母機動部隊を)ペルシャ湾に張りつけておくと、東アジア、台湾における展開能力というものを限定することになります。そのことをイランに期待している。これは大きな要素だと思います。

 中東原油に90%依存している日本ほどではないわけですが、中国は海外からの輸入原油の50%を中東に依存している現実があります。すなわち中東の覇権国であるアメリカの影響力の減少、あるいは影響力の排除というのは、(中国にとっては)いわば細くて非常に長い原油の供給ルートを保護する意味もあります。シーレーンが切実なのは、何も日本だけではありません。

 中国にとっても、自国の産業、あるいは軍需機構との関係で必要な原油や天然ガスの安全なシーレーンを維持しようという問題意識...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦