●バイデン政権の戦略の欠陥を露呈させる鏡にもなっている
さて、もう一つ私が触れておきたいことは、ロシアと中国、そしてペルシャ湾岸、中東諸国との関係です。ウクライナ危機は、今、バイデン大統領のウクライナに対する戦略の貧しさだけではなく、実はそれを通して対イラン戦略の欠陥を露呈させる鏡にもなっているということです。
バイデン政権は、全く主観的に、アメリカの中東における最大の脅威であり潜在敵国であるイランについて、ロシアと中国が、あたかもアメリカと(中国風にいうならば)「核心的利益」を共有してるかのように思い込んでいるところがあり、そのように語ってもいます。しかし、これは全く誤解であり、誤っています。
ロシアと中国は、イランと協力、提携、あるいは同盟に近い関係を結びながら、アメリカ主導の世界秩序・国際秩序を崩そうとしているのが、現状です。
最近、イラン国会の外交安全保障委員会の報道官は、このようなことを述べています。「新しい世界秩序において、イラン、ロシアそして中国の3国が、新たな世界で極を形成した」と。そして、「この新たな関係が、アメリカやヨーロッパの不公平な覇権を終わらせる先駆になる」と述べました。これは2022年1月27日前後のことです。
こうしたイランの態度を見れば、イランと中国、ロシアが、中東のシリア戦争に限らず、最も密な同盟関係、友好関係であることがわかるわけですが、バイデン大統領はそれをあえて見ようとしません。
(2022年)1月21日にジュネーブで、ロシアのラブロフ外相が、アメリカのブリンケン国務長官に対して、イランの「核問題暫定合意」を提案しました。(2015年に締結した)イラン核合意の「JCPOA=包括的共同作業計画(Joint Comprehensive Plan of Action)」から、アメリカは今、脱退している状態にありますから、それに代わる、いわば改訂版として「イランに核開発を遅らせ限定させる代償として、石油の輸出を認めさせる」という案を提案したのです。
ブリンケンはこういうことをもって「アメリカはロシアと、事態の緊急性を共有した」と、主観的かつ楽観的に述べております。すなわち「ロシアによるイランへの影響力の行使に期待する」というのが、このブリンケンの発言の意味だと思いますが、これはまことに楽観的なものであります。
なぜかというと、この程度のことは、前政権...