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アメリカを「舐められた獅子」に貶めるロシア、中国、イラン

ロシアのウクライナ侵攻と中国、イラン(2)米国の誤認

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所特任教授
情報・テキスト
ウクライナ危機は、今、バイデン大統領のウクライナに対する戦略の貧しさだけではなく、実はそれを通して対イラン戦略の欠陥を露呈させる鏡にもなっていると山内昌之氏は語る。アメリカのバイデン政権は、明らかにロシアの思惑を見誤っていた。その一方で、ロシア、イラン、中国は、同盟に近い関係を結びながら、アメリカ主導の世界秩序・国際秩序を崩そうとしている。いわばアメリカを、「舐められた獅子」とでもいうべき地位に貶めようとしているのである。(全5話中第2話)
時間:09:26
収録日:2022/02/15
追加日:2022/03/13
タグ:
≪全文≫

●バイデン政権の戦略の欠陥を露呈させる鏡にもなっている


 さて、もう一つ私が触れておきたいことは、ロシアと中国、そしてペルシャ湾岸、中東諸国との関係です。ウクライナ危機は、今、バイデン大統領のウクライナに対する戦略の貧しさだけではなく、実はそれを通して対イラン戦略の欠陥を露呈させる鏡にもなっているということです。

 バイデン政権は、全く主観的に、アメリカの中東における最大の脅威であり潜在敵国であるイランについて、ロシアと中国が、あたかもアメリカと(中国風にいうならば)「核心的利益」を共有してるかのように思い込んでいるところがあり、そのように語ってもいます。しかし、これは全く誤解であり、誤っています。

 ロシアと中国は、イランと協力、提携、あるいは同盟に近い関係を結びながら、アメリカ主導の世界秩序・国際秩序を崩そうとしているのが、現状です。

 最近、イラン国会の外交安全保障委員会の報道官は、このようなことを述べています。「新しい世界秩序において、イラン、ロシアそして中国の3国が、新たな世界で極を形成した」と。そして、「この新たな関係が、アメリカやヨーロッパの不公平な覇権を終わらせる先駆になる」と述べました。これは2022年1月27日前後のことです。

 こうしたイランの態度を見れば、イランと中国、ロシアが、中東のシリア戦争に限らず、最も密な同盟関係、友好関係であることがわかるわけですが、バイデン大統領はそれをあえて見ようとしません。

 (2022年)1月21日にジュネーブで、ロシアのラブロフ外相が、アメリカのブリンケン国務長官に対して、イランの「核問題暫定合意」を提案しました。(2015年に締結した)イラン核合意の「JCPOA=包括的共同作業計画(Joint Comprehensive Plan of Action)」から、アメリカは今、脱退している状態にありますから、それに代わる、いわば改訂版として「イランに核開発を遅らせ限定させる代償として、石油の輸出を認めさせる」という案を提案したのです。

 ブリンケンはこういうことをもって「アメリカはロシアと、事態の緊急性を共有した」と、主観的かつ楽観的に述べております。すなわち「ロシアによるイランへの影響力の行使に期待する」というのが、このブリンケンの発言の意味だと思いますが、これはまことに楽観的なものであります。

 なぜかというと、この程度のことは、前政権のときにも、イランとアメリカが交渉をまとめるときの条件としては、事実上、合意に達しようとしていたことだったのです。けれども、ハーメネイー最高指導者が、「核開発と石油のバーター」だけではなくて、「人権やテロに対してアメリカの議会が課している制裁の解除をアメリアは実現しなければならない」という強い意志を示し、これを結局のところアメリカに対してまとめきれなかったということで、両者は決裂したわけです。アメリカのブリンケン国務長官、バイデン大統領が新たにこの筋でまとめようとしても、なかなかイランが同意する可能性はない。つまり、イランの方がむしろ売り手市場になっているということなのです。


●「抵抗」によってアメリカは駆逐されているではないか


 実際にこういうことをいっているあいだに――つまり、1月21日にブリンケンがイラン核問題に関して「ロシアと信頼関係ができて合意した」という、のんきなことを述べているあいだに――、イランとロシアは何をしていたかというと、中国を交えて、ロシア、イラン、中国がインド洋の洋上で、共同で海軍の演習を行なっていたのです。その1日前には、プーチン氏がモスクワにおいて、イランのライースィー大統領を迎えていました。

 ライースィーは、ロシアの国会において「イランによるアメリカ主導の中東秩序を破壊する」と語りました。これに関しては「抵抗」という言葉を使っています。「抵抗=ムカウヴワマ」というアラビア語がありますけれど、そこから発生したペルシャ語を使ったのだろうと思います。

 ライースィーがいうところの「抵抗」によってアメリカは、アフガニスタンから駆逐されたではないか。イラクからも駆逐されたではないか。シリアにおいては、イランとロシアの協力というものの前に、アメリカはシリアから出ていったではないか。このようなことを「抵抗」と呼んでいるわけです。

 このようなことをいわれているときに、バイデン大統領は、「ラブロフを通してプーチンに悪い冗談をいわれたのではないか」と疑ってみることが大事であるにもかかわらず、なぜ、ブリンケンは、「アメリカとロシアとのあいだで、イラン問題を巡っての緊急性を了解、共有した」というような結論になるのか。私は甚だ疑問に思うわけです。

 昔、「眠れる獅子」という言葉がありました。19世紀末期の清朝中国に関して「眠れる獅子」といわれたことがあ...
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