外交とは国益を最大化しなければいけないのだが……。35年にもわたる外交官経験を持つ小原氏が8年がかりで書き上げた著書『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)。小原氏曰く、外交とは「つかみどころのないほど裾野が広いもの」だというが、そのような外交の要諦を読者に伝えるために意識したこと、あるいは本書が他の本と一線を画す特徴とは何か。まずは著書に込めた思いを語る。(2025年4月15日開催:紀伊国屋書店本店トークイベントより、全5話中第1話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
政治と経済
小原雅博(東京大学名誉教授)
時間:13分13秒
収録日:2025年4月15日
追加日:2025年9月5日
収録日:2025年4月15日
追加日:2025年9月5日
≪全文≫
●実務と理論を合体させた本を書くという試み
―― 皆さま、こんばんは。本日は小原雅博先生のご本『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)のトークイベントにお越しいただきまして、まことにありがとうございます。著者の小原先生です。
小原 皆さん、こんばんは。よろしくお願いします。
―― ということで、まず先生にご本をお書きになった背景を聞く前に、このトークイベントに臨むお心持ちをお願いします。
小原 突然の質問ですね。私もいろいろな本を書いてきたのですが、この本に懸けた思いはものすごくあります。実はこの本は、書き上げるまでに8年かかりました。何度も書き上げたのですが、まずもって新書にはならないほど分厚いものになってしまった。これは編集部泣かせで、最初にこの企画が持ち上がってから何度も言われたのは、新書なので「先生、一番いいのは200ページくらい。多くて250ページくらいが望ましい」ということだったのですが、365ページになってしまった。これでも相当、削ったのです。
目次を見ていただいたら分かるように、ひとつひとつの章が1冊の本になる重みがある章立てになっています。ひと言で言うと、「外交とは何か」とタイトルにありますが、外交とは本当につかみどころがないくらい裾野がとても広い。政治もあれば、経済もあれば、軍事、安全保障もあって、文化もあって、いろいろな人の交流があって歴史がある。これを全部、書き切ろうと8年前に思ってやり始めたのだけれど、とても中公新書の編集部が求める新書の分量では書ききれない。途中、何度か挫折をしながら、やっと書き上げることができました。
―― 私も拝読させていただいたのですが、仕事柄、戦前の歴史などはある程度は知っていたところではあるのですが、よくここまでコンパクトな中に必要な情報が詰め込まれているなということを感じました。
小原 ありがとうございます。
―― いえいえ。本当に感銘を受けました。特に、小原先生の外交のご経験に立脚されてのことだと思いますが、どんな人物が何をして、その結果がどうだったのか、どういう行動がどう反映したのか。例えば歴史家がなんとなくぼかすようなところも普通はあると思うのですが、そういうところがきちんと押さえられて書かれていると。
特に戦前、複雑にいろいろな人物が登場してくる中で、よくこれほど情報量が濃密なものをお書...
●実務と理論を合体させた本を書くという試み
―― 皆さま、こんばんは。本日は小原雅博先生のご本『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)のトークイベントにお越しいただきまして、まことにありがとうございます。著者の小原先生です。
小原 皆さん、こんばんは。よろしくお願いします。
―― ということで、まず先生にご本をお書きになった背景を聞く前に、このトークイベントに臨むお心持ちをお願いします。
小原 突然の質問ですね。私もいろいろな本を書いてきたのですが、この本に懸けた思いはものすごくあります。実はこの本は、書き上げるまでに8年かかりました。何度も書き上げたのですが、まずもって新書にはならないほど分厚いものになってしまった。これは編集部泣かせで、最初にこの企画が持ち上がってから何度も言われたのは、新書なので「先生、一番いいのは200ページくらい。多くて250ページくらいが望ましい」ということだったのですが、365ページになってしまった。これでも相当、削ったのです。
目次を見ていただいたら分かるように、ひとつひとつの章が1冊の本になる重みがある章立てになっています。ひと言で言うと、「外交とは何か」とタイトルにありますが、外交とは本当につかみどころがないくらい裾野がとても広い。政治もあれば、経済もあれば、軍事、安全保障もあって、文化もあって、いろいろな人の交流があって歴史がある。これを全部、書き切ろうと8年前に思ってやり始めたのだけれど、とても中公新書の編集部が求める新書の分量では書ききれない。途中、何度か挫折をしながら、やっと書き上げることができました。
―― 私も拝読させていただいたのですが、仕事柄、戦前の歴史などはある程度は知っていたところではあるのですが、よくここまでコンパクトな中に必要な情報が詰め込まれているなということを感じました。
小原 ありがとうございます。
―― いえいえ。本当に感銘を受けました。特に、小原先生の外交のご経験に立脚されてのことだと思いますが、どんな人物が何をして、その結果がどうだったのか、どういう行動がどう反映したのか。例えば歴史家がなんとなくぼかすようなところも普通はあると思うのですが、そういうところがきちんと押さえられて書かれていると。
特に戦前、複雑にいろいろな人物が登場してくる中で、よくこれほど情報量が濃密なものをお書...
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