国際関係においては外交と軍事(内政)のバランスが重要となる。著書では、近代日本において、それらのバランスが崩れていった過程を3つのステージに分けて解説しているが、今回はその中の、国のトップが外政家・原敬から職業外交官・幣原喜重郎に移った際の幣原の評価について解説する。(2025年4月15日開催:紀伊国屋書店本店トークイベントより、全5話中第2話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
政治と経済
小原雅博(東京大学名誉教授)
3.タイトル未定
2025年9月19日配信予定
4.タイトル未定
2025年9月26日配信予定
4.タイトル未定
2025年9月26日配信予定
5.タイトル未定
2025年10月3日配信予定
時間:11分57秒
収録日:2025年4月15日
追加日:2025年9月12日
収録日:2025年4月15日
追加日:2025年9月12日
≪全文≫
●日本近代外交史の4つのステージ
―― この本は、先生が冒頭にもご紹介してくださったように、外交史だけではなく、いわゆる外交理論も交えた、総合的な「外交とは何か」というものが1冊でつかめるようなつくりになっていると思います。それぞれの内容について先生からご紹介いただくと、読みどころはどういうところになりますか。
小原 それぞれの内容についてご紹介すると何時間もかかってしまうと思います。最初の第1章がドーンと頭でっかちになっていて、近代日本外交史という部分です。これを私は、3つに分けました。戦前は――最後(戦後)に4つ目のステージはあるのですが――「調和」「攻防」「崩壊」です。そして戦争が終わって終戦後、その3つのステージを踏まえて歴史の教訓を日本は学んで、そこから戦後の外交路線――これは吉田茂と幣原喜重郎がつくったわけですが――「国際競争と平和主義」です。
今はウクライナ戦争が起こり、中東も混乱しています。トランプ大統領が関税戦争まで仕掛けて、米中関係は非常に危機的な状況になってきているという現実がある。この現実を考えれば、これまでわれわれが戦後、本当に長い平和を享受できた、その礎は、まさに戦前の外交の過誤、あるいは軍事が外交を圧倒するという歴史を踏まえて日本が再生し、新しい戦後の外交を進めてきた結果、われわれは平和でいられた。
だけれど今、それで本当に十分なのか。もちろん、外交だけで平和を守るというのは、これは少しナイーブです。今の世界情勢を見ても分かるように、日本の中でも議論が高まっている抑止力、あるいは反撃力を含めた対処力といった議論はもちろんしなければいけないですし、最低限必要な軍備は持っていないといけない。でも同時に、外交をしっかりやらないといけない。お隣の中国とも外交をしっかりやらないといけない。
その外交というものは、例えば「戦前の反省」といったときに、どういうことだったのかを簡単にいえば、今いった3つのステージがあり、その3つのステージの「調和」「攻防」「崩壊」は何を意味しているかというと、先ほど言った二項論、二項対立である外交と軍事の関係をどうバランスして、どう連動させていくのか。
当時は帝国主義の時代です。「攻防」の時代には、第1次世界大戦が終わって帝国主義の時代が基本的に終焉していくといった時代の変化を、日本が的確に理解し、それに沿...
●日本近代外交史の4つのステージ
―― この本は、先生が冒頭にもご紹介してくださったように、外交史だけではなく、いわゆる外交理論も交えた、総合的な「外交とは何か」というものが1冊でつかめるようなつくりになっていると思います。それぞれの内容について先生からご紹介いただくと、読みどころはどういうところになりますか。
小原 それぞれの内容についてご紹介すると何時間もかかってしまうと思います。最初の第1章がドーンと頭でっかちになっていて、近代日本外交史という部分です。これを私は、3つに分けました。戦前は――最後(戦後)に4つ目のステージはあるのですが――「調和」「攻防」「崩壊」です。そして戦争が終わって終戦後、その3つのステージを踏まえて歴史の教訓を日本は学んで、そこから戦後の外交路線――これは吉田茂と幣原喜重郎がつくったわけですが――「国際競争と平和主義」です。
今はウクライナ戦争が起こり、中東も混乱しています。トランプ大統領が関税戦争まで仕掛けて、米中関係は非常に危機的な状況になってきているという現実がある。この現実を考えれば、これまでわれわれが戦後、本当に長い平和を享受できた、その礎は、まさに戦前の外交の過誤、あるいは軍事が外交を圧倒するという歴史を踏まえて日本が再生し、新しい戦後の外交を進めてきた結果、われわれは平和でいられた。
だけれど今、それで本当に十分なのか。もちろん、外交だけで平和を守るというのは、これは少しナイーブです。今の世界情勢を見ても分かるように、日本の中でも議論が高まっている抑止力、あるいは反撃力を含めた対処力といった議論はもちろんしなければいけないですし、最低限必要な軍備は持っていないといけない。でも同時に、外交をしっかりやらないといけない。お隣の中国とも外交をしっかりやらないといけない。
その外交というものは、例えば「戦前の反省」といったときに、どういうことだったのかを簡単にいえば、今いった3つのステージがあり、その3つのステージの「調和」「攻防」「崩壊」は何を意味しているかというと、先ほど言った二項論、二項対立である外交と軍事の関係をどうバランスして、どう連動させていくのか。
当時は帝国主義の時代です。「攻防」の時代には、第1次世界大戦が終わって帝国主義の時代が基本的に終焉していくといった時代の変化を、日本が的確に理解し、それに沿...
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