外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
小原雅博(東京大学名誉教授)
国際関係においては外交と軍事(内政)のバランスが重要となる。著書では、近代日本において、それらのバランスが崩れていった過程を3つのステージに分けて解説しているが、今回はその中の、国のトップが外政家・原敬から職業外交官・幣原喜重郎に移った際の幣原の評価について解説する。(2025年4月15日開催:紀伊国屋書店本店トークイベントより、全5話中第2話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:11分57秒
収録日:2025年4月15日
追加日:2025年9月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●日本近代外交史の4つのステージ


―― この本は、先生が冒頭にもご紹介してくださったように、外交史だけではなく、いわゆる外交理論も交えた、総合的な「外交とは何か」というものが1冊でつかめるようなつくりになっていると思います。それぞれの内容について先生からご紹介いただくと、読みどころはどういうところになりますか。

小原 それぞれの内容についてご紹介すると何時間もかかってしまうと思います。最初の第1章がドーンと頭でっかちになっていて、近代日本外交史という部分です。これを私は、3つに分けました。戦前は――最後(戦後)に4つ目のステージはあるのですが――「調和」「攻防」「崩壊」です。そして戦争が終わって終戦後、その3つのステージを踏まえて歴史の教訓を日本は学んで、そこから戦後の外交路線――これは吉田茂と幣原喜重郎がつくったわけですが――「国際競争と平和主義」です。

 今はウクライナ戦争が起こり、中東も混乱しています。トランプ大統領が関税戦争まで仕掛けて、米中関係は非常に危機的な状況になってきているという現実がある。この現実を考えれば、これまでわれわれが戦後、本当に長い平和を享受できた、その礎は、まさに戦前の外交の過誤、あるいは軍事が外交を圧倒するという歴史を踏まえて日本が再生し、新しい戦後の外交を進めてきた結果、われわれは平和でいられた。

 だけれど今、それで本当に十分なのか。もちろん、外交だけで平和を守るというのは、これは少しナイーブです。今の世界情勢を見ても分かるように、日本の中でも議論が高まっている抑止力、あるいは反撃力を含めた対処力といった議論はもちろんしなければいけないですし、最低限必要な軍備は持っていないといけない。でも同時に、外交をしっかりやらないといけない。お隣の中国とも外交をしっかりやらないといけない。

 その外交というものは、例えば「戦前の反省」といったときに、どういうことだったのかを簡単にいえば、今いった3つのステージがあり、その3つのステージの「調和」「攻防」「崩壊」は何を意味しているかというと、先ほど言った二項論、二項対立である外交と軍事の関係をどうバランスして、どう連動させていくのか。

 当時は帝国主義の時代です。「攻防」の時代には、第1次世界大戦が終わって帝国主義の時代が基本的に終焉していくといった時代の変化を、日本が的確に理解し、それに沿...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫