日本周辺での有事の可能性が叫ばれる中、日米関係を重視しながらも、隣国・中国とはどうやって関係を築いていくべきか。習近平政権以前の中国の在り方から振り返りながら、これからの中国との付き合い方を考える。また、シリア問題を議題にして、中東情勢を踏まえながら日本外交の進むべき道を模索する。講義終了後の質疑応答編。(2025年4月15日開催:紀伊国屋書店本店トークイベントより、全5話中第5話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●日米同盟を堅持しつつ、中国と継続的な対話を
【質問】
日中関係について。中国は隣国であり、経済関係では重要だが、一方、中国国内でのスパイ容疑による日本人逮捕や、尖閣諸島海域への中国船侵入などの問題がある。中国に対して今後、どういう外交対応をしていけばいいのか。
小原 おっしゃることは、すごくよく分かりますし、多くの日本の国民の中にある問題意識だと思います。日本の外交にとって一番大事なのは日米同盟で、アメリカですが、同時に、中国は引越しのできないお隣の国であり、かつ軍事的にも経済的にも台頭し、今やアジアの中心にあるわけです。今、中国の経済力は、GDPで計れば日本の4倍以上になっている。そして中国には日本企業が3万社以上出ている。投資もものすごく行われている。こういう中で、アメリカ、中国との関係をどうしていくのか。
特に今、米中関係が悪くなってきて戦争になるかもしれないという中で、日本はその狭間に置かれているわけです。つまり、アメリカと一緒になって中国と対立だけしていればいいという地理的な位置にはない。地政学的には非常に微妙な立場に置かれているわけです。だから、問題は山ほどあります。言いたいこともあるし、実際に言っています。先ほど言ったように、最前線にある北京の大使館の大使以下とは毎日のように、向こう側のカウンターパートと話をしていますし、私も実際にアジア大洋州局にいたときはそういうことをやりました。
どこまでそれがメディアに出ているかということについては、この本(『外交とは何か 不戦不敗の要諦』)を読んでいただいたら分かるように、交渉事はなかなか外には出せない。互いに合意したことは外に出せますが、その間のやりとりは第三国が絡んできたりといろいろなことがあるので、出せない部分がある。だから、国民の中には「本当にきちんとやっているのか」という思いがあるということだと思います。
皆さんの問題意識はものすごくよく分かっていて、なんとかそこを変えていかなければいけない。ただ、「内政干渉」という言葉があるように、基本的に一国の主権国家の中でどのような政治体制ができていて、どのように政策が遂行されているかということについて、影響力を与えることはなかなか難しいところがある。
それでも、例えば日本だけではなくて、日本とヨーロッパ、アメリカが一緒になる。あるい...