「内政と外交」――これはまさに切っても切れない大事な関係にある。外交とは、国際関係ばかりに気を遣っていればいいのではなく、海外の声をききながら国内の声にも耳を傾けることが重要だと小原氏は述べる。まさに内政が大事であるということだ。その意味で、戦後日本の一国平和主義も再考すべきではないか。それらを含め、外交官だけでなく国民全体に求められる「外交感覚」とはどういうものかを解説する。(2025年4月15日開催:紀伊国屋書店本店トークイベントより、全5話中第3話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●外交だけで平和が訪れるわけではない
―― この『外交とは何か』という本を読んで、現代を考えたときに非常に示唆に富むものだと思います。国際秩序が変わっていく局面、ガラリと今までの常識通りには行かないというときには、ますます恐らくそういうことが必要になると思います。
ちょうど今、現代においても、アメリカでトランプ大統領の第2期政権が始まって、いろいろなことが起きている。もしかすると、戦後秩序が根本的に変わってしまうかもしれないという危惧さえいわれています。その中で、例えば戦前の歴史を踏まえて考えたときに、現代の日本の外交はいかにあるべきか。
例えば、外務省があって、経済産業省があって、それぞれの立場でそれぞれの折衝、交渉は進めていくと思いますし、またそこに政治家が関与していくことになってきますので、場合によっては戦前の状況を少し彷彿とさせるようなことも起きるのかな、などと思うのですが、そのあたりは先生、いかがお考えですか。
小原 それも外交と内政の関係から見えてくる問題だと思います。本の第4章に「内政と外交」があります。この中で、「外交一元化」について書いています。「外交一元化」とはいろいろな側面がある。例えば外務省の場合、湾岸戦争のときに日本はとにかくお金を非常にたくさん出したわけですが、では自衛隊を含めて、人の派遣がどれだけあったかというと、それはなかった。それでもって世界(国際社会)からはかなり酷評されました。
私は、お金の力はすごく大きいと思うのですが、でもやはり人を出さなかった。それは戦前の、まさに軍事が暴走した結果、ああいう戦争に突き進み、敗戦になったという、そうした戦争の反省に立って、憲法9条もそうですが、海外に自衛隊を出すということに対しては非常に慎重であった。反対論も非常に強かった。
ですが、今言われたように国際情勢がどんどん変わっていく中で、経済大国になった日本に対する要求、期待も大きくなってくるわけですね。そうした中での外交においては、自分たちの理念、政策の路線というものも、国際社会の一員、それも大きな一員である限りは、国際社会の中の世論、あるいはそうした声を踏まえて、少しずつ変えていかないといけない。それが国際協調ということでもあると思うのです。
そういうことからすると、もう1つの柱である日本の平和主義、その中で消...