トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
佐橋亮(東京大学東洋文化研究所教授)
トランプ第2次政権の始動により、冷戦後の世界史は大きな転換点を迎えている。それは政治面のみにとどまらない国際秩序の転換点だとも言える。その象徴ともいえるのが、2025年6月のイランへの核施設攻撃であり、トランプ政権の関税政策である。自国優先の経済政策、普遍的価値の軽視とその推進者としての役割の放棄、さらに独断専行の軍事力の行使。アメリカはこれまでの国際主義と決別したのであろうか。(全3話中第1話)
時間:10分57秒
収録日:2025年6月23日
追加日:2025年8月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●三つの論点からアメリカ政治を語る


 皆さん、こんにちは。東京大学の佐橋と申します。今日はこれから三つに分けてお話をしていきたいと思います。

 最初に、今の世界をどのように見ればいいのかということについてのお話です。正直なところ、本動画の収録日である2025年6月23日前後というのは、世界の歴史におけるかなりの転換点だとは思っています。少なくとも「冷戦後」といわれていた過去35年ほどの世界の転換点であろうと思います。それがどういう意味なのかということについて、まず最初にお話をしたいと思います。

 続いてアメリカと中国の関係についてです。米中対立を中心に、アジアは今どうなっているのか、これからどうなるのかということをお話ししたいと思います。

 最後に、ではこうした世界の大きな変化を受けて、私たちはどのように物事を考えたらいいのかということです。私は特にキーワードとして、「最悪なことを想定したほうがいい」「底線思考」という言葉をよく使うのですが、そのような考え方で世界にどう備えればいいのかということを3番目に申し上げたいと思います。よろしくお付き合いください。


●国際政治の混乱と国際秩序の行方


 まず最初の論点として、今の国際政治がかなり混乱していること、またそれだけでなく、大きな世界秩序、国際秩序の転換点であるということについて、お話をしたいと思います。

 これまでの国際秩序は、予見可能性が非常に高かったわけです。同時に大国と呼ばれている国が、かなりの部分を形作ってきました。そういった中で、特にアメリカは、国内市場や企業の働き、ドルという国際決済通貨の力、そして最後に同盟国や核兵器を持っているという軍事的な力、これらを基盤にして国際秩序を形成してきました。

 1945年に(第二次世界大戦が)終わったときには、確かにソ連もいたわけですが、やがて冷戦が終結し、いってみれば(アメリカは)打ち勝ったわけです。そして、アメリカの持っている今の三つの力の源泉を中心に、国際秩序というものが世界全体を(共産圏も含めて)覆うようになった。これが、過去35年ぐらいの冷戦終結後の世界だったように思います。

 こういった国際秩序というものが、今や非常に大きな変化をしているわけです。それはなぜかというと、やはりドナルド・トランプ政権が再びで...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味
『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神
ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか
早坂隆