●第1次トランプ政権から始まった本格的な米中対立
さて、こういったことを踏まえて、続いて米中対立についてお話をしたいと思います。
米中対立、すなわちアメリカと中国の対立がいつ頃から始まったのかというと、明確に第1次トランプ政権からだと思います。オバマ政権の末期、2014~2015年あたりから、アメリカの中では「あれ、2013年から始まった中国の習近平体制は、どうも様子がおかしいぞ」という気づきがありました。
「ただ中国の力を伸ばしているだけではなく、その力をどのように使うかということで、明らかに私たちの期待とはそぐわない方向に行っている。国内の市場改革もしないし、世界の国、特にアメリカやG7との協調もおざなりにしている。そして、政治改革。温家宝や胡錦濤の時代には、やる方向が見えていたものが、そういったことにも後ろ向きになっている。おかしい。米中関係はこのままでいいのだろうか」。
オバマ政権の末期にそれが出てきたのですが、一気に、いわば激流のように中国戦略や中国への見方を変えたのが、トランプ第1次政権でした。そして、私も中公新書(『米中対立-アメリカの戦略転換と分断される世界』2021年発刊)を書きましたが、皆さんご存じの通り、米中対立というものが始まります。
実はその米中対立は、軍事の衝突や軍事力で競り合うということだけではありませんでした。政治的な対立、要するにアメリカの政治的影響力、同盟国やパートナー国を増やすということもありましたし、中国の政治体制への批判もありました。
さらには、そこに経済が大きく巻き込まれました。皆さんも「経済安全保障」という言葉をお聞きになったことがあると思いますが、経済活動にどうやって安全保障の視点を入れるのか。このことが、トランプ第1次政権では非常に強くなりましたし、そのための法律も米国議会で超党派により成立し、実行に移されました。輸出管理、投資の規制、他には中国に由来のある科学者へのビザの発給を「真剣」に行なったり、政府調達の相手を替えたり、いろいろなことがなされました。日本も同じで、こういった経済安全保障の視点が重視された。これが米中対立の大きな特徴です。
●バイデン政権に引き継がれた米中対立の深刻さ
実はトランプ政権が最初の4年間...