トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序
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同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
政治と経済
佐橋亮(東京大学東洋文化研究所教授)
トランプ大統領は同盟国の役割を軽視し、むしろ「もっと使うべき手段だ」と考えているようである。そのようななかで、ヨーロッパ諸国も大きく軍事費を増やし、「負担のシフト」ともいうべき事態が起きている。そのなかでアジアと日本はどうか。国際経済秩序が崩壊し、普遍的価値も推進力を失いつつある今、どうすればいいのだろうか。そこで考えておくべきことは、正常化バイアスを外して「常に最悪を考えて行動すること」=中国の習近平流に言うならば「底線思考」ではないか。(全3話中第3話)
時間:10分14秒
収録日:2025年6月23日
追加日:2025年8月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●トランプ政権にとっての同盟国の役割は?


 最後の話に移りたいと思います。

 トランプ政権は、これから4年間で世界をどう変えていくのだろうか。このことについて、最後に考えてみたいわけです。まず二つ、大きなことをお話ししてから、まとめに移りたいと思います。

 まず一つは、日本を含めた同盟国はこれからどうなっていくのだろうかということです。

 同盟国はアメリカの視点に立てば「最大の資産」だと、私も思います。こんなによく付き合ってくれる相手はいないわけです。日本や、ヨーロッパのほとんどを占めるNATO諸国がそうですが、アメリカといつも話し合って、アメリカとビジョンも同じで、協力してくれる国、これはもう最大の戦略的資産だと思います。

 しかし、トランプ政権はそのようには見ないのです。同盟国がアメリカの「負債」になってきたのではないかとすら思っている。自分たちアメリカが同盟の傘を差し出し、安全保障の傘を差し出して──核兵器だけではなく通常の軍事力もそうです──その傘に甘えていたのではないかと思っている。

 今のトランプ政権にとってみると、同盟は「もっと使うべき手段」だということです。もっと負担させなくてはいけない。もっと彼らを働かせなくてはいけない。それでこそ、自分たちは自分のやりたいこと、やるべきことに専念できると思っているわけです。

 今のトランプ政権も孤立主義ではないのです。世界に関わらなければいけないということはよく分かっている。しかし、その負担を自分たちだけが中心で背負ってきた、今の世の中の在り方が不満なのです。だから、同盟国に「もっと働け」と迫るわけで、しかも同盟国からの注文は受け付けない。道義的なコメントをされても、どこ吹く風なのです。


●「負担の共有」から「負担のシフト」へ


 こういう状況の中、確かにアメリカと、例えばNATO(北大西洋条約機構)──ヨーロッパやカナダ──のような同盟国の関係には、すきま風が吹きかねなくなっている。他方でウクライナ戦争もあるし、NATO諸国は今、一気に大軍拡の方向に向かっています。軍事予算でGDPの3.5パーセント、それ以外の安全保障に関わるインフラ整備で1.5パーセント、合わせてGDPの5パーセントを一つの目標にするということが今いわれていて、調整が...

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