学力喪失の危機~言語習得と理解の本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
今井むつみ(一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事/慶應義塾大学名誉教授)
昨今、めざましい発展を遂げているAI技術。流暢にチャットをやりとりする生成AIはしかし、本当の意味で使っている言葉を理解することができるのだろうか。言語学習の根本にある「記号接地」問題から、人間とAIの本質的な違いに迫る。(全5話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:13分17秒
収録日:2025年5月12日
追加日:2025年10月14日
≪全文≫

●概念の学習と「記号接地」


―― そのようなお話も非常に多々、このご本(『学力喪失』)の中にはご紹介されていますけれど、もう1つ最後に興味深かったのは、いわゆるAIですね。

 人工知能、特に大規模言語モデルというところで、あたかも分かったような文章が返ってくるというところで、コンピュータもここまで考えられるようになったのかと、ついつい思ってしまいがちです。先生がご本を書いた時点では、例えばAIに2分の1と3分の1のどちらが大きいですかと問題を与えたところ間違えてしまっているということですね。

今井 はい。

―― これは、私もやってみたところ、今は直っているようですけれど、そういう事例を見ていくと、本当に理解しているのかどうかというのが非常に危うい気持ちになってきますね。

今井 そうですね。「ハルシネーション」という、しれっと間違えるという問題はすごく大きいですね。

 実は人間には「流暢性バイアス」というものがあって、あからさまに間違ったことを言われても、すごく流暢に言われると信じてしまうというバイアスもあるのです。なので、気をつけなくてはいけないというところはあるのですけれど、ハルシネーション自体はなくなることはないと思います。学習が進めば少なくはなるとは思うけれど、なくなることはないので、(だから)すごく気をつけなくてはいけないと思います。

 でも、それ以上に大事な、AIと人の違いでいちばん大きなところは、「記号接地」をしているかどうかということなのです。

 「記号接地」という言葉、ここまでも何回か使っていますが、記号接地という言葉をご存じない方は多いと思うので、改めて少しだけお話しさせていただきます。

 記号接地という言葉は、もともと1990年、今のような生成AIができるはるか昔なのですが、そのときに、当時の人工知能というのは、定義として記号の意味を人間が与えて、その意味を与えられた記号をどのように操作して問題解決をしていくとコンピュータが問題解決をする(のか)というような(ことで)、それが人工知能の研究の主流だったのです。

 そのときに、人が意味を与えた記号をただ操作するということに意味があるのか。特に言語を学習するというと...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
イスラム教におけるシーア派とスンニ派の違い
イスラム教スンニ派とシーア派の違いとは?
山内昌之
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(2)60歳は折り返し地点
「悠々自適」は定年を正当化するための神話にすぎない
出口治明