●哲学とは、まだ手に入っていない知に憧れることである
専修大学の貫成人です。これから「哲学史の10人」ということで、有名な哲学者についてお話しいたします。
始めに、そもそも哲学とはどういうものなのかということをお話しします。そのためにはまず、日本語より英語で考えた方が分かりやすいかもしれません。哲学は英語で「フィロソフィー」です。もとのギリシャ語は「フィロソフィア」という言葉でした。「フィロ」という言葉と「ソフィア」という言葉からなっていて、それぞれ「フィロ」は何かを愛するということを、「ソフィア」は知や賢さを意味します。したがって、「フィロソフィア」は「知を愛する」を意味します。哲学というのは、その知がまだ手に入っていない状態である、ということをこれから説明していきます。この場合、「まだ持っていない知を愛する」、つまりこの知に憧れる、といったようなニュアンスが重要です。
哲学史は古代から現代にかけて、ヨーロッパ・アメリカだけに限ってもこの表にとどまらないほどさまざまな哲学者がいますが、このシリーズの中では表の赤字で示した10名の人々について話をします。
●ソクラテスは「フィロソフィア=哲学」という言葉を最初に用いた
第一回はまずソクラテスです。
ソクラテスは最初の哲学者といわれています。もともとソクラテスは、今のギリシャの首都であるアテナイの職人でした。いろんなことを行い、そのうち市民からクレームがついて裁判になってしまいます。ソクラテスはその裁判で死刑になるという、悲劇的な生涯を送りました。
彼は「フィロソフィア」という、日本語では哲学を意味する言葉を最初に用いたといわれています。ソクラテスに関わる言葉としては、「汝自身を知れ」「無知の知」などが有名ですが、ここでは特に「無知の知」についてお話しします。
●さまざまな問答をふっかけるが、人々はうまく答えられない
ソクラテスがなぜ人々から嫌われていたかというと、彼がアテナイの街で歩いている人々に問答を通して喧嘩をふっかけていたからです。例えば、「勇気とは何か」「何かを知っているというのは一体どういうことか」ということをその辺で歩いている人に聞いて回っていました。
その相手は、勇気についてで...