西洋哲学史の10人~哲学入門
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アリストテレス:理想だけでは空回りする…プラトンとの違い
西洋哲学史の10人~哲学入門(3)アリストテレス 現実の諸要因
貫成人(専修大学文学部教授/文学博士)
あらゆるものに共通する「イデア説」を考えたプラトンの弟子アリストテレスは、師であるプラトンに反目し、独自の議論を企てる。彼の学問は現実世界に根ざしたものだったが、それはいかなるものか。専修大学文学部教授の貫成人氏が豊富な事例から論じる。(全10話中第3話)
時間:8分26秒
収録日:2018年2月9日
追加日:2018年5月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●アリストテレスはプラトンと反目し、現実の明確な分析を目指した


 3回目はアリストテレスについてお話しします。アリストテレスの特徴は、私たちが住んでいるこの現実の世界をしっかりと見据え、しかもその中に、非常にさまざまな要素があるということを明確に分析したというところです。

 アリストテレスはプラトンの弟子です。これまでお話ししたソクラテスとプラトンは、アテナイの出身でしたが、アリストテレスはアテナイから随分離れたマケドニアの出身でした。

 マケドニアはアレクサンドロス大王の出身国です。アリストテレスはアレクサンドロス大王の家庭教師であったということが有名です。アリストテレスは非常にたくさんの著作を残しています。日本でもアリストテレス著作集が訳され出版されています。

 その内容は非常に多岐にわたっています。プラトンは基本的に哲学の話だけをしましたが、アリストテレスの著作集を見ると、その内容は政治や自然、つまり今でいう物理学、あるいは人間の心や演劇などについても書かれており、非常に多岐にわたっていることが分かります。「万学の長」といわれる所以です。その著作としては、『形而上学』『ニコマコス倫理学』『詩学』などがあります。

 前回お話しした、ラファエロ・サンティが描いたプラトンとアリストテレスの絵を見ると、両者の違いが分かります。プラトンがイデアという天上にあり私たちの現実の世界にはない原理を重視しようとしたのに対して、アリストテレスは私たちの身の回りの現実に目を向けようとしました。そういう意味では全く真逆の二人でありました。実際に二人は仲が悪かったといわれています。


●子どもが大きくなる際には、さまざまな要因が必要となる


 それではアリストテレスの考えは大まかにいってどういうものだったのでしょうか。現実の要因がさまざまあるといっても、それはどういうことなのでしょうか。

 プラトンの場合、イデアがもとになってさまざまなものが出てくると考えられていました。それに対してアリストテレスは、私たちの周りにあるものが、今のように生まれてきた原理は全て、現実の世界にあるさまざまなものなのだと言います。

 これは、スライド内の絵から考えると分かりやすいと思います。人間の子ど...

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