西洋哲学史の10人~哲学入門
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ヘーゲル:弁証法は現代でも実際に使える思考のテクニック
西洋哲学史の10人~哲学入門(8)ヘーゲル 弁証法
貫成人(専修大学文学部教授/文学博士)
伝統的な西洋哲学を完成したとされるヘーゲルは、弁証法という哲学的手法を用いた。この手法は対立する立場を維持しつつ、上位の解を見つけていくというものであり、実際に使える思考のテクニックである。専修大学文学部教授の貫成人氏が弁証法の具体的な手法を複数の事例から解説する。(全10話中第8話)
時間:11分10秒
収録日:2018年2月9日
追加日:2018年6月15日
カテゴリー:
≪全文≫

●ヘーゲルは伝統的な西洋哲学を完成させた


 8回目はヘーゲルです。ヘーゲルは、近代哲学、あるいは伝統的な西洋哲学を完成した人であると考えられています。したがって昔の哲学史の教科書は、最後はヘーゲルで終わるのが通例でした。いわゆる古典的な哲学の集大成をした人です。

 ヘーゲルもさまざまな著作を残しましたが、彼の哲学的な手法として重要なのは、いわゆる弁証法です。弁証法という言葉はいろいろな所で聞くことがあるかと思いますが、これがどういうものであるのかということを今日はお話ししたいと思います。

 ヘーゲルはカントより少し後にシュトゥットガルトで生まれました。シュトゥットガルトは南ドイツのバイエルンにおける大きな街です。実は、ヘーゲルが生まれた頃と同時期にドイツでゲーテやシラーなども生まれていました。ヘーゲルは、いわば黄金世代の一人で、作曲家のベートーヴェンと同い年生まれでした。音楽はヘーゲルも非常に好きだったのですが、実はベートーヴェンは嫌いだったと言われています。ちなみに、ヘーゲルが好きだったのはイタリアオペラでした。

 ヘーゲルは、哲学で『精神現象学』や『論理学』といった著作を残しているだけでなく、『美学講義』や『歴史哲学』といった非常に多岐にわたる業績を残しています。彼はベルリン大学で教えていたのですが、これらは大部分がベルリン大学での講義記録でした。

 彼の考えの最も中心に弁証法があるのですが、それがどういうものなのかということをお話しします。


●対立する2つの立場を維持しつつ上位の解を見つける弁証法


 弁証法という言葉を聞くと、大体よく出てくるのが「定立」と「反定立」、そして「総合定立」といった言葉です。定立や反定立では何を言っているのかよく分かりません。しかし簡単にいってしまえば、同じ問題について2つの相対立する立場がぶつかり合っている、そういう状態であると考えれば良いのです。

 スライドに小さい字で「小樽」と「蔵王」と書いてあります。例えば、ある若い夫婦がいて、正月休みにどこか旅行に行こうというとき、1人はおいしい海産物が食べたいから小樽に行きたいと言い、もう1人はスキーがしたいから蔵王に行きたいと言ったとします。小樽と蔵王では、山と海で全く違うため、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎