●ヘーゲルは伝統的な西洋哲学を完成させた
8回目はヘーゲルです。ヘーゲルは、近代哲学、あるいは伝統的な西洋哲学を完成した人であると考えられています。したがって昔の哲学史の教科書は、最後はヘーゲルで終わるのが通例でした。いわゆる古典的な哲学の集大成をした人です。
ヘーゲルもさまざまな著作を残しましたが、彼の哲学的な手法として重要なのは、いわゆる弁証法です。弁証法という言葉はいろいろな所で聞くことがあるかと思いますが、これがどういうものであるのかということを今日はお話ししたいと思います。
ヘーゲルはカントより少し後にシュトゥットガルトで生まれました。シュトゥットガルトは南ドイツのバイエルンにおける大きな街です。実は、ヘーゲルが生まれた頃と同時期にドイツでゲーテやシラーなども生まれていました。ヘーゲルは、いわば黄金世代の一人で、作曲家のベートーヴェンと同い年生まれでした。音楽はヘーゲルも非常に好きだったのですが、実はベートーヴェンは嫌いだったと言われています。ちなみに、ヘーゲルが好きだったのはイタリアオペラでした。
ヘーゲルは、哲学で『精神現象学』や『論理学』といった著作を残しているだけでなく、『美学講義』や『歴史哲学』といった非常に多岐にわたる業績を残しています。彼はベルリン大学で教えていたのですが、これらは大部分がベルリン大学での講義記録でした。
彼の考えの最も中心に弁証法があるのですが、それがどういうものなのかということをお話しします。
●対立する2つの立場を維持しつつ上位の解を見つける弁証法
弁証法という言葉を聞くと、大体よく出てくるのが「定立」と「反定立」、そして「総合定立」といった言葉です。定立や反定立では何を言っているのかよく分かりません。しかし簡単にいってしまえば、同じ問題について2つの相対立する立場がぶつかり合っている、そういう状態であると考えれば良いのです。
スライドに小さい字で「小樽」と「蔵王」と書いてあります。例えば、ある若い夫婦がいて、正月休みにどこか旅行に行こうというとき、1人はおいしい海産物が食べたいから小樽に行きたいと言い、もう1人はスキーがしたいから蔵王に行きたいと言ったとします。小樽と蔵王では、山と海で全く違うため、...