プラトンの哲学を読む
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プラトン対話篇にみる5つの特徴
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ヨーロッパ哲学の伝統はプラトン哲学の脚注だ
プラトンの哲学を読む(1)対話篇という形式の哲学
哲学と生き方
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
古代ギリシャのアテナイに生まれたプラトン。彼の哲学が分からなければ、現代の西洋、東洋、さらには日本の哲学や自然科学は根本的には理解できない。そういえるほど、プラトンは重要な哲学者である。そのプラトンの哲学について、東京大学大学院人文社会系研究科教授の納富信留氏が「対話篇」という形式で論じることの意味を論じる。(全6話中第1話)
時間:10分50秒
収録日:2018年7月11日
追加日:2018年10月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●世界中の哲学に影響を与え続けるプラトンの哲学


 東京大学で哲学を教えています納富信留と申します。今日は「プラトンの哲学を読む」ということでお話しします。

 最初にプラトンの対話篇について、概説的なことからお話ししましょう。古代ギリシャの哲学者プラトンは紀元前5世紀から4世紀、もう少し詳しくいうと紀元前427年から紀元前347年にかけて生きた、今から2400年ほど前の哲学者です。今シリーズでは、その哲学者が書いた作品についてまとめてお話しします。

 古代ギリシャの哲学者と申しますと、遠い昔で日本とはかなりかけ離れた異人だとお思いになると思いますが、今でも世界中に非常に大きな影響を与え続けています。歴史的に見れば、西洋の哲学や自然科学、その後、東洋、最終的には日本にも大きな影響を与え、今日でも最も重要な意義を持っている哲学者です。

 日本の場合、プラトンは19世紀の後半から西洋哲学の導入とともに紹介され、各種翻訳が何度も行われた、最もポピュラーな哲学者の一人です。イギリスの哲学者で20世紀に活躍したアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドという人がいますが、彼の著書に「ヨーロッパの哲学伝統の最も安全な一般的性格づけは、それがプラトンについての一連の脚注からなっているということである」という有名な言葉があります。脚注というのはフットノートのことですが、つまりプラトンの哲学の注釈に過ぎないということです。多少大げさかもしれませんが、ホワイトヘッドという20世紀を代表する哲学者から見て、西洋哲学の伝統はプラトンという哲学者の影響下で発展してきたものであり、今日もそこからなかなか抜け出ることができない、ということを言い表した言葉だと解釈されています。

 実際、西洋哲学は、ほとんどの潮流がプラトンの問題設定から始まり、その中で展開されてきた、ないしはプラトンの考え方に対して非常に強い反発、あるいはそれに対する否定という形で行われてきたものです。今日でも西洋哲学、あるいは西洋の近代科学を理解する上で、プラトンの思想を知っておかないとなかなか根本のところは理解できないといわれるほど、貴重かつ重要な存在なのです。


●プラトンは若い頃に戦争とソクラテスの刑死を経験


 ではまずプラトンという人について、説明します。プラトンは先ほど申したように、紀元前5世紀の終わりから4世紀の半ばまで生...

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