読書とは何か
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仕事を成功させるには冷静な現実感覚が必須
読書とは何か(2)実社会における読書の意味
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
プラトン、キケロの国家論およびその思想を語る言葉を豊富に例示しながら、書物を通して知識を得ることの意味、得た知識をどのような感覚をもって仕事に活かすべきなのかを考える。(全6話中第2話目)
時間:15分24秒
収録日:2014年4月9日
追加日:2014年7月10日
≪全文≫

●仕事を成功させるのに必要なのは、冷静な現実感覚


 皆さん、こんにちは。それでは、前回に引き続いて読書とは何か、私が考えている世の中の仕事との関連で、読書というものはどういう意味を持つのかということについて、第2回目としてお話してみたいと思います。

 世の中の仕事は、どのような仕事であっても突き詰めて申せば、いわば全て人との交渉、人との商談、あるいは営業活動、あらゆる意味で他人との関係をどう取り結ぶかということや、あるいは社会や他人との関係においてどうすべきかという、この判断の問題に関係してくるかと思います。いかなる仕事におきましても、仕事を成功させるには冷静に現実感覚をもって臨むことが必要です。ないものねだりをしたりしても駄目ですし、夢物語を語っても実際のビジネスには役に立ちません。そして、空想的な理想、あるいは理想主義というものを語るだけでは、営業活動というものに成功するはずもありません。すなわち、大事なことは、冷静に現実感覚、リアリズムを発揮することになります。


●理想主義のプラトンと現実感覚に優れたキケロ、それぞれの国家論


 リアリズムとは、時として人によって考え方が分かれる大変難しい定義を含んでいます。あえて申しますと、このリアリズムをめぐる解釈の違いを謙虚に考えるため、また、他人は自分とそういう現実感覚も違うということも含めて、実はそれを何から学ぶかと言うと、基本的には読書を通して学ぶのです。次いでその読書の結果、実際の対人関係等々における実践や、そこでの矛盾や齟齬などによって自分の得た知識をテストするということを、実は人間はしばしばやっているのです。

 一例を挙げますと、古代ギリシャの哲学者の一人であったプラトンがいます。紀元前5世紀に活躍したソクラテスの弟子であった人物です。プラトンの『国家』、あるいは国家論は、現実の国家が直面する政策や理念、あるいは政治家の苦悩を考えようとするとき、私はあまりにも政治の厳しいリアリティから遊離し、あまりにも理想を求めている結果、現実に生きている私たちにはやや手の届かない理想の世界で語られているような印象を受けます。これは私の解釈です。

 しかし一方、私の昔の同僚でありました東京大学の高田康成教授は、ローマ帝国の政治思想家、政治家であるキケロを書いた本『キケロ-ヨーロッパの知的伝統』(岩波新書...

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